南三陸町の自然史に関する研究

南三陸の自然史標本の収集・管理・保存 
2011年に発生した東日本大震災により、ネイチャーセンターが所有していた標本のほとんどが流出してしまいました。当準備室では、ネイチャーセンターの再建と機能維持を目指し、南三陸町の動植物などの自然史標本の収集・管理・保存を行っています。
当準備室の標本収集・管理・保存状況
志津川湾の海洋生物相
志津川湾は寒流と暖流両方の影響を受ける独特の環境にあります。このような環境では、冷たい海の生物と暖かい海の生物の両方が分布するため、湾内の生物多様性は高いです。当準備室では、志津川湾にどのような海洋生物が見られるのか、1年を通して調査を行っています。 

2018年3月現在までに

 魚類: 112種
 無脊椎動物: 382種
 その他動物: 4種(キタオットセイ・カマイルカ・オサガメ・アカウミガメ)
 海藻・海草類: 188種

が確認されています。 

 

クチバシカジカ

 

ソメワケウミクワガタ

 

タシンスナクモヒトデ

 

ユカリ

 

アラメ

 

 

タチアマモ

     

海洋資源・地域資源の研究開発

ラムサール条約登録へ向けて
ラムサール条約登録へ向けた自然史情報の収集、整理を行っています。2018年10月にドバイ(アラブ首長国連邦)で行われる締約国会議にて登録見込みです。
ラムサール条約登録に向けた詳しい情報はラムサール条約と南三陸の海のページをご覧ください。

海洋環境の保全・モニタリングに関する研究

磯焼け対策調査 
志津川湾の一部では、海藻の森が姿を消し、その状態が続く「磯焼け現象」が見られます。そのため、地元の漁協や外部研究機関と協力し、磯焼け対策に関する活動を行っています。
磯焼け対策調査の様子
環境省モニタリングサイト1000藻場調査
志津川湾では寒流と暖流が混ざり合うことから、冷たい海を代表するコンブ類のマコンブと暖かい海を代表するコンブ類のアラメが共存する貴重な藻場が広がっています。そのため、環境省が毎年実施しているモニタリングサイト1000の調査対象地(藻場サイト)に指定されており、当準備室も調査に参加・協力しています。
モニタリングサイト1000藻場調査に関する詳しい情報は環境省モニタリングサイト1000のページをご覧ください。 
モニタリングサイト1000藻場調査の様子
宮城県志津川高等学校自然科学部との生物調査
2017年春より宮城県志津川高等学校自然科学部が実施している南三陸町内の生物調査に協力しています。松原干潟の生物相調査に加え、2018年春より町内を流れる八幡川下流域の生物相調査もスタートしました。調査についての情報は教育・啓発のページもご覧ください。
干潟調査
東日本大震災に伴う大津波により甚大な被害を受けた旧志津川市街地に位置する八幡川河口(松原干潟)がフィールドです。
希少な生物も多く見つかり、多様性豊かな貴重な自然環境であることが確認されています。今後も生徒たちとともに調査を継続していく予定です。
2017年度の調査の結果は、こちらをご覧ください。第17回環境甲子園志津川高校自然科学部報告書 [2317KB pdfファイル]  

松原干潟の背景

50年前、八幡川河口付近は砂浜で潮干狩りなどが楽しまれていた場所でした。1960年に起こったチリ地震津波により防潮堤が築かれ、公園になりました。しかし、2011年東日本大震災の津波により防潮堤が壊され、再び干潟に戻りました。震災後、巨大防潮堤が作られ埋め立てられる計画でしたが、住民の運動により干潟が守られることになりました。干潟が壊されるという例は数多く聞きますが、自然災害により干潟となった場所が守られた例は全国でもあまり多くありません。震災から6年が経ち復興工事も進み、町の風貌が少しずつ見えつつあります。守られた干潟にはどんな生き物たちがいるのか調査をして見たところ、たくさんの貴重な生き物が見つかり、干潟が自然の姿に戻りつつあることを証明してくれました。

この豊かな自然に囲まれた地で生きるものとして、これらの干潟を含む自然環境を守り伝えていく必要があります。南三陸町では志津川湾をラムサール条約湿地に登録する準備を進めており、順調に行けば2018年10月に登録される予定です。登録された際には、町民で自然環境の保護と活用をしていく姿勢を見せていくことが重要だと考えています。

(志津川高校自然科学部作成の図鑑「松原干潟の生き物たち」より引用)

松原干潟
表層生物の探索              底土中生物の探索

スジホシムシモドキ

ジャムシ

オオヘビガイ

 八幡川下流域の生物調査
八幡川は南三陸町内で最も広い流域面積を持つ河川です。現在、八幡川の下流域は河川堤の工事が進んでおり、そこに住む生物への影響を知るためにも、「八幡川下流域にどのような生物が住んでいるのか」という基礎的な調査が必要です。
今後も生徒たちとともに継続して調査を行うことにより、河川生物に対する河川堤工事の影響評価を行うことが出来る貴重なデータを集積していきます。
なお、本調査は株式会社エコリスの旗薫氏と真部和代氏に指導・協力をしていただきました。
 

地点1

地点2

地点3

 八幡川下流域の様子
 
河川生物の採集の様子

ヤマメ

ウツセミカジカ

コオニヤンマ

調査協力
当準備室では、南三陸町の自然を対象とした研究を行う外部研究者の受け入れとその調査・研究活動等の協力・調整を継続して行っています。

主な研究業績

自然環境活用センター(通称: ネイチャーセンター)およびネイチャーセンター準備室のスタッフによって実施された研究業績です。 
  1. Tanaka K. 2003. Population dynamics of the sponge-dwelling gnathiid isopod Elahognathia cornigera.Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom 83: 95-102.
  2. Tanaka K. 2004. A new species of Gnathia (Isopoda: Cymothoida: Gnathiidae) from Ishigaki Island, the Ryukyus, south-western Japan. Crustacean Research 33: 51-60.
  3. Tanaka K. 2005. A new genus and species of Gnathiid isopod (Isopoda, Gnathiidae) from the Ryukyus, southwestern Japan. Journal of Crustacean Biology 25: 565-569.
  4. 田中克彦・青木優和・小松輝久. 2005. 東シナ海で採集された流れ藻葉上性フクロエビ類について. 月刊海洋 37: 527-531.
  5. 西栄二郎・田中克彦. 2006. 多摩川河口川崎市側の干潟における底生動物相. 神奈川自然誌資料. 27: 77-80.
  6. 西栄二郎・田中克彦. 2006. 要注意外来生物としての多毛類カンザシゴカイ類の分類について. 神奈川自然誌資料 27: 83-86.
  7. 鶴岡理・阿部拓三・宗原弘幸・矢部衛. 2006. 北海道および宮城県から記録されたカジカ科魚類ヒメフタスジカジカIcelinus pietschi. 魚類学雑誌 53: 89-93.
  8. Komatsu T., Tatsukawa K., Filippi J. B., Sagawa T., Matsunaga D., Mikami A., Ishida K., Ajisaka T., Tanaka K., Aoki M., Wang W., Liu H., Zhang S., Zhou M. and Sugimoto T. 2007. Distribution of drifting seaweeds in eastern East China Sea. Journal of Marine Systems 67: 245-252.
  9. 鶴岡理・阿部拓三・佐藤長明・矢部衛. 2007. 北海道南部沖および宮城県沖の太平洋から記録された日本初記録のタウエガジ科魚類ヒゲキタノトサカAlectrias cirratus. 魚類学雑誌 54: 203-208.
  10. 山内東・田中克彦・太齋彰浩・阿部靖・佐藤雅典・横濱康繼・大越健嗣. 2007. 宮城県志津川湾におけるミネフジツボの個体群動態. Sessile Organisms 24: 1-8.
  11. Abe T. and Munehara H. 2009. Adaptation and evolution of reproductive mode in copulating cottoid species. Pp. 221-246. In Jamieson B. G. M. (ed.), Reproductive biology and phylogeny of fishes. Part B. Science Publishers, Enfield.
  12. 阿部拓三・佐藤長明. 2009. 東北太平洋岸志津川湾におけるダンゴウオLethotremus awaeの産卵生態. 魚類学雑誌 56: 159-163.
  13. Tsuruoka O., Abe T. and Yabe M. 2009. Validity of the cottid species Stelgistrum mororane Transferred to the genus Icelus (Actinopterygii: Perciformes: Cottoidei), with confirmed records of Stelgistrum stejnegeri from Japanese eaters. Species Diversity 14: 97-114.
  14. Fujita T., Kawase O. and Hendler G. 2011. Rediscovery and redescription of a rare Japanese brittle star, Amphiura multispina (Echinodermata, Ophiuroidea, Amphiuridae). Bulletin of the National Museum of Nature and Science, Series A (Zoology) A 37: 209-215.
  15. 川瀬摂. 2011. 宮城県南三陸町自然環境活用センターの被災状況と現状. 海洋と生物 196: 410-415.
  16. Kawase O., Goo Y. K., Jujo H., Nishikawa Y. and Xuan X. 2011. Starfish, Asterias amurensis and Asterina pectinifera, as potential sources of Th1 immunity-stimulating adjuvants. The Journal of Veterinary Medical Science 73: 227-229.
  17. Murphy R. R., Dreger K. L., Newsome S., Rodocker J., Slaughter B., Smith R., Steimle E. A., Kimura T., Makabe K., Kon K., Mizumoto H., Hatayama M., Matsuno F., Tadokoro S. and Kawase O. 2012. Marine heterogeneous multi-robot systems at the great Eastern Japan Tsunami recovery.Journal of Field Robotics 99: 819-831.
  18. Yamanaka T., Abe T. and Yabe M. 2012. First record of Ernogrammus zhirmunskii (Actinopterygii: Cottiformes: Stichaeidae) from Japan, with a description and a revised diagnosis. Species Diversity 17: 127-133.
  19. Abe T., Wada T., Aritaki M., Sato N. and Minami S. 2013. Morphological and habitat characteristics of settling and newly settled Roughscale Sole Clidoderma asperrimum collected in the coastal waters of northeastern Japan. Fisheries Science 79: 767-777. Doi: 10.1007/s12562-013-0649-y.
  20. Kawase O. 2013. Seasonality of Gonadal Development in Rare Japanese Brittle Star, Amphiura multispina (Echinodermata, Ophiuroidea, Amphiuridae). Annual Report of Premedical Sciences, Dokkyo Medical University 2: 37-41.
  21. 川瀬摂. 2014. 南三陸町で実施されたロボットによる災害支援活動. 日本ロボット学会誌 32: 125-128.
  22. Kawase O. and Furukawa R. 2014. Regional difference of ray number variation in a starfish, Patiria pectinifera. Annual Report of Premedical Sciences, Dokkyo Medical University 3: 49-52.
  23. 小松輝久・寺内元基・太齋彰浩・青木優和・名倉良雄・佐々木久雄・辻本良・佐々修司・坂本真吾・柳哲雄. 2014. 東日本大震災からの沿岸漁業復興を目指す志津川湾藻場再生への取り組み. 沿岸海洋研究 52: 103-110.
  24. 阿部拓三・太齋彰浩. 2017. 博物館と生態学 (28) リアスの生き物よろず相談所-震災前後の南三陸における取組み-.日本生態学会誌 67: 67-71. [3815KB pdfファイル] 

※現在、ネイチャーセンターが関わった研究業績情報の収集を行っています。情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ご一報ください。