薄暗い展示室の中で、壁に英語と日本語の津波被災者の証言が光で投影されており、来場者が展示を熱心に読んでいる様子が写っている写真

東日本大震災の経験を次世代に紡ぐ伝承施設「南三陸311メモリアル」。情報を見る・聞くだけではなく、自ら考えジブンゴトとして捉える仕掛けが盛り込まれた伝承施設です。10月1日の開館に先駆けて、内部公開されました。

南三陸の海と山をつなぐ新たなランドマーク

東日本大震災で壊滅した南三陸町志津川地区の中心市街地。防災集団移転事業に伴って土地区画整理事業が行われ、約10メートル嵩上げされた土地に、地場産業等の復興を進めてきました。2017年3月に本設となった「南三陸さんさん商店街」がオープン。この商店街と一体になる「道の駅」の誕生で、震災復興祈念公園〜中橋〜道の駅「さんさん南三陸」エリアは、より回遊性が生まれ、学びやショッピング、飲食を一度に楽しむことができます。

三陸の海沿いに建つ、黒い屋根が特徴的な「東日本大震災津波伝承館」の全景で、防潮堤や周辺のまちづくりとともに、復興の様子が見える航空写真

写真提供:一般社団法人南三陸町観光協会

今回完成した建物は以下の3つの機能を併せ持つ複合施設です。

  1. 交通拠点施設 JR志津川駅等
  2. 震災伝承施設 南三陸311メモリアル
  3. 観光交流施設 南三陸ポータルセンター

地元産の南三陸杉がふんだんに使用された建物は、海と山、過去と未来をつなぐ「船」をイメージしたという大きな三角屋根が特徴。南三陸町の新たなランドマークとなることでしょう。先行オープンしていた商業施設「南三陸さんさん商店街」とあわせて、エリア一体が宮城県内で18番目の「道の駅」指定となります。

木製の格子状の天井装飾が美しく、建物の中央にある通路と階段を囲むように設計された、伝承館の特徴的な建築デザインの一部を写している写真

一人一人の「体験」こそが一番大切なもの

中核となるのは震災伝承施設「南三陸311メモリアル」です。東日本大震災で被災した南三陸町の人々の体験を伝えると共に、防災減災について自分ごととして考えていただくきっかけを提供する震災伝承ラーニング施設です。

「南三陸311メモリアル」は以下の6つのスペースからなります。

1.エントランス「南三陸町における東日本大震災を知る」

壁面に大きく記された「2011年3月11日 14時46分」という文字と、マグニチュード9.0、震源の地図などが見え、東日本大震災の発生を強く印象づける展示が写っている写真
海と山が複雑に入り組んだ三陸沿岸の地形を立体的に再現した模型で、津波の被害範囲や地域の地形特性がわかる展示の一部を写している写真

2.展示ギャラリー「町民の記憶と経験を伝承する」

震災直後(3月12日・土曜日)のメモで、避難状況や支援物資などに関する記録が展示された写真

佐藤仁町長が震災翌日に書き留めたメモ

黒いパネルに被災地の写真や地図、証言が展示されており、横にはモニターでインタビュー映像などが流れている展示室内の写真

3.アートゾーン「失われた命を思う」

錆びたような金属箱が何列にも積まれておりいる写真

クリスチャン・ボルタンスキー氏の代表作である錆びたビスケット缶を積み上げるインスタレーション空間

4.ラーニングシアター「町民の証言に耳を傾け、語り合い、考える」

来館者がスクリーンに映し出された震災当時の映像や語りを視聴している写真

当時の町民の証言等で構成されたラーニングプログラム映像を見ながら自分自身に置き換え向き合う

来館者がスクリーンに映し出された震災当時の映像を真剣に見ている様子の写真

会場に居合わせた人々で意見交換する場面も。よりジブンゴトとして捉えていきます

5.みんなの広場「感謝と生きる喜びを伝える」

住民たちの笑顔や地域行事、復興活動の様子を写した写真が飾られている写真

真家浅田政志氏が南三陸町の町民たちと共に創り上げた写真19点を常設展示

青いプレートには「南三陸町へのあたたかいご支援 ありがとうございました。」と大きく書かれ、多くの団体や個人の名前が記されている写真

復興を支援してくださったみなさんへの感謝を伝える場所も

モニターで流れているのは、震災を経験した住民たちの証言映像の写真

震災後に町民たちが共に支え合いながら生きる姿、交流の証も展示

6.展望デッキ「いのちに思いを馳せる」

壊滅的な津波により被災物の収集が困難を極めた南三陸町。そこで注目したのは、町民一人一人の経験をもとにした「証言」でした。それぞれの場所で、それぞれの状況下で経験した東日本大震災とその後の復興。この伝承館では、その「証言」こそ未来に繋げる一番大切なものとして、位置付けています。89名、のべ81時間にわたる91のロングインタビューが証言映像として企画展ごとに編集して展示されます。

震災を経験した女性が語っている様子がモニターで流れている写真

南三陸町民のリアルな体験をもとにした証言通して「自然とは、人間とは、生きるとは」に思いを馳せる施設となっています。

「被災した市街地の賑わいをどのように再生するのか?というのが町の大きな課題でした。そんななか、震災から2年後に隈研吾さんとご縁があって、町のグランドデザインを依頼することになりました。将来にわたって南三陸町に多くの方々においでいただくために、中心市街地の回遊性こそが大変肝になる事業だと話していました」と2021年4月の道の駅「さんさん南三陸」の登録証伝達式にて話していた佐藤仁町長。今回の道の駅完成が南三陸町の復興事業のひとつの集大成となります。

クリスチャン・ボルタンスキー作品を常設で展示「命を思う」

錆びた金属の箱が塔のように積み上げられた空間の写真

さらにこの震災伝承施設の特徴となっているのはアートゾーンの存在。そこには、フランスの現代美術家クリスチャン・ボルタンスキー氏によるインスタレーション空間「MEMORIAL」があります。

東日本大震災直後に三陸沿岸を訪れ、その悲惨な光景を心に焼き付け、命の尊厳をテーマに制作活動を続けてきたクリスチャン・ボルタンスキー氏。

普遍的に命の重さを感じられる沈黙の場であり、「自然とは、人間とは、生きるとは」という根源的な問いを私たちに投げかけ続けます。

南三陸311メモリアル概要

  • 開館日:2022年10月1日
  • 住所:宮城県本吉郡南三陸町志津川字五日町200番地1
  • 問い合わせ:下記メールリンク参照(一般社団法人南三陸町観光協会)
  • 開館時間:9時〜17時
  • 休館日:火曜日、年末年始
  • 料金:ラーニングプログラムの所要時間にあわせて入場料を設定していますx。
  • 詳細は公式サイトへ。

この記事に関するお問い合わせ先

企画課 企画情報係
〒986-0725 宮城県本吉郡南三陸町志津川字沼田101番地
電話:0226-46-1371
ファックス:0226-46-5348
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