司法書士会からのお知らせ (平成23年4月26日更新)
この度の東北関東大震災によって、被災された方々におかれましては、家族の安否や被災生活の不自由さで、大変な想いをされていることとご察し申し上げます。
そのような状況の中でも、もし、私ども司法書士がお応えすることで、少しでも安心を取り戻していただけるなら幸いです。
こんなご心配ありませんか。
権利証がなくなってしまった。
権利証は、汚れたり、紛失しても再発行はされません。
紛失しても、登録手続きを行う際には、別途、方法がありますから、心配はいりませんが、登記識別情報(平成17年以降登記された方に交付されています)を紛失した場合には、管轄法務局で失効手続きをしておいた方がよいでしょう。
実印、銀行印がなくなってしまった。
紛失した印鑑が他人によって悪用されないとも限りません。実印を紛失した場合は役場で、銀行印を紛失した場合は金融機関で、それぞれ早急に改印手続きをした方がよいでしょう。
預金通帳、キャッシュカード等の紛失、汚損等
通帳については、まずは、早急に、金融機関へ連絡し、追って再発行してもらうとよいでしょう。カードは不正使用されるおそれがありますので、すぐに、金融機関・カード発行会社または管理会社等に連絡した方がよいでしょう。
住宅ローンについて
災害により、収入が減ってしまったり、復旧のための資金が必要なため、住宅ローンなどの返済をこれまでどおり続けることが困難になった場合には、金融機関へ返済方法の見直し(返済期間の延長や返済の一時据え置き)について相談してみましょう。日本銀行や財務局は、被災地の各金融機関に対して、ローン返済についての特例措置をとるよう要請することもあります。
貸家について
借家・テナントの建物が災害により使用できなくなった場合には、建物の賃貸借契約は終了するのが原則です。家賃の支払い義務がなくなり、敷金・保証金等を預託している場合には、精算し返金してもらうことになります。しかし、建物の使用が可能かどうか(契約が継続するかどうか)については、明確でない場合もありますので、注意が必要です。
家やお墓等の倒壊について
建物の瓦が落下したり、塀などの工作物が倒れるなどして、他人に損害を与えた場合、原則として、その物の所有者や、それを預かっていた人が損害を賠償する責任を負うことになります。しかし、震度6,7程度の地震など甚大な災害によって、建物や塀が倒れたり、お墓が倒れてお隣の家や、お墓を損壊させても、原則的には、損害を賠償する義務はありません。ただし、もともと基礎工事などの不備によって倒壊しやすい工作物であった場合には、責任を負う場合があります。
会社との雇用関係について
災害により、会社や個人事業者の経営状況が悪化した場合、整理解雇や従業員の減給措置とることも可能ですが、経営者側から一方的にこれらの措置をとっても無効または不法行為となる可能性が高いといえますので、慎重に検討する必要があります。従業員の立場とすれば、被災し、不安を抱えている状態ですので、解雇されたり、減給されるのは忍びがたいものでしょう。経営者としては、業務の現況や資産負債状況、今後の見通し、とるべき方策等を従業員に説明し、理解と協力を求める必要があります。
相続登記について
今後、建物を再築するなどするために、土地の名義を亡くなられた方の名義から変更しなければならない方もおられると思います。遺言書があれば、これに基づいて、あるいは相続人全員により遺産分割協議を行い、これを書面化(遺産分割協議書)して相続登記を行うことができます。なお、印鑑証明書等その他の添付書類が必要になりますので専門家にお尋ね下さい。
※本書では、一般的に、また簡単に説明しています。現実に発生するトラブルは、複雑に法律問題が絡み合っていることが多くあります。トラブルが発生したときには、できるだけ早く専門家等に相談されることをお勧めします。
また、トラブルの解決に当たっては、相手や関係者も自分と同様、被災者であることを忘れず、思いやりと誠意を持って話し合うことが大切です。自身の生活再建とともに、隣人や地域の再生も願って行動すれば、自ずと問題解決の方法が見つかるはずです。