
南三陸には人々の暮らしぶりを伝える民具の数々が大切に保管されています。
その一つが本日ご紹介する、合木船(かっこぶね)。
町指定の有形民俗文化財でもあります。

合木船は100年ほど前からこの地域で用いられていた小型の漁船です。
曲がった丸太をくりぬいて船体に使うなど独特の工法で作られており三陸の荒波にも耐える安定性が重宝されていました。
が、造船の際の手間の多さと素材の入手の難しさから徐々に平底の舟に取って代わられ、また昭和40年頃には樹脂製の舟が普及し始めたことで現在は港から姿を消しています。
この春から、志津川仮設魚市場近くの船工場にて1隻の合木船の修復が行われています。
歌津の海でアワビ捕りなどに使われていた舟だそうです。
おそらく大正時代に造られたものであろうとのこと。
9月下旬、その修復作業が公開されました。

こちらが修復中の合木船です。
船底が崩れて抜けてしまっています。


この船底の修復が今回の一番の目的。
船大工・千葉勝司さんが2枚の板を合わせ、かすがいで繋げます。
これが“シキ”と呼ばれる底板になるそうです。

「船の横の部分、“カオナレ”には木の天然の曲がりが生かされているんだ。
そこに“シキ”をぴったり合わせなきゃなんねえから、調整に気を遣うんだよ。」

現在その技術を持つ船大工さんはほとんどいないと聞きます。
「いやまあ、俺の他にも何人かいるよ?みんな80過ぎだけどな。」
足元には見たことのない形の工具が並びます。

「大工もそうだけど、昔はこの辺に道具屋がたくさんあったもんだ。
今はこんなの手に入らないよ。道具は自分で工夫して作ってるし、釘は広島から取り寄せたねえ。
そうだ、ここを見てごらん。」
古いシキを裏返すと錆びたボルトが現れました。

「これは最初から船に付いてたんだ。ボルトって大正時代からあったんだよ。」
船には当時の最先端の技術が詰まっていました。
合木船は11月頃に修復が完了する予定だそうです。
行先は未定ですが、町内に民俗資料館などができればそこに展示されるだろうとのお話でした。

町指定文化財 合木船(かっこぶね)の修復
(日比谷)
