山並みを見渡す景色の駐車場に数台の車が停まっており、帽子をかぶった人々が輪になって集まっている様子の写真

3月のある日、入谷地区 坂の貝峠の駐車場に数台の車が集合しました。
今日はこれから皆で山に入り“火防線”の刈り払いを行うのです。

山並みを見渡す景色の駐車場に数台の車が停まっており、白いヘルメットをかぶった人々が輪になって集まっている様子の写真

“火防線”とは文字通り“火を防ぐ線”。
街中や山野に一定の空き地を確保することで、火災の際の延焼を防ぐというものです。

豊かな山林と分水嶺に囲まれた南三陸。
数十年前にはその分水嶺に沿った火防線が作られていたそうです。
それを復活させよう!というのが今回の目的。
発起人は南三陸ネイチャーセンター友の会会長 鈴木卓也さんです。
(前回卓也さんをご紹介した記事はこちら)

枯草が覆う斜面の前で話をしている、黄色と緑の上着を着た鈴木卓也さんの写真

火防線が開通すれば道となり、人が行き来できます。
一帯は山と海、両方の景観に恵まれています。
火防線は自然と親しむための歩道・トレイルとしても利用できるでしょう。

葉の落ちた木々の間から、遠くの山と海が見える静かな風景を高台から撮影した写真

取り組みは仮称“火防線刈払いプロジェクト”。
立ち上げメンバーの一人(故人)の愛称から“スパイダープロジェクト”とも呼ばれています。
今年2月に始動したばかりで、初回は岩手大学自然史系サークル有志の皆さんが山の作業を行ったそうです。

第2回となる今回は中央大学環境プログラム 谷下ゼミの谷下雅義教授と7名の学生さんたちが駆けつけてくれました。
2年前、ブナの森の枝払いでも活躍したメンバーです。
頼もしい背中を追いつつ惣内(そうない)の山に分け入ります。

白いヘルメットをかぶった人達が、枯れ草の広がる山に集まっている写真
木々の伐採跡や山道、遠くに連なる山々が広がっている、山の中腹から見た風景の写真

30分ほど歩くと目の前が木で閉ざされました。
前回作業時の最終地点です。

細い木が立ち並ぶ林の中で、ヘルメットをかぶった数人が作業のために集まっている写真

ここから本日の作業開始。
各々手のこを握り、手近な立木に取り掛かります。

ヘルメットをかぶった二人が地面近くで、小さな木の根元を手のこで切っている写真
白いヘルメットをかぶった女性が手のこを持ち、木々の間を歩いている写真

「今日は両腕を広げたぐらいの幅で道を作ります。」(卓也さん)

尾根沿いの低木を刈り、道を拓いていく一同。
谷下ゼミの皆さんは来町回数10回以上のリピーター揃い。
山の作業の経験も豊富とのことで、手際も鮮やかです。

白いヘルメットをかぶった男性が、手袋をした両手で長い枝を抱えている写真
白い上着とヘルメット姿の男性が木の根元にしゃがみ込み、ノコギリで木の根元を切っている写真
ピンクと青のカラフルなジャンパーを着て白いヘルメットをかぶった人が、ノコギリで木の枝を切っている写真

ざくざくと藪が払われること、およそ3時間。
こちらが着手前の森。

冬枯れの森の中に太い倒木が横たわり、周囲に細い木々が密集している写真

そしてこちらが皆で拓いた部分。
光と風が通り、ずいぶん道らしくなりました。
今日の作業でルートの半分超まで道が伸びたそうです。

葉の落ちた木々の間にできた道を、数人のグループが縦一列で奥へと歩いている写真

「まずはこうして、坂の貝峠から惣内(そうない)山頂までを貫通させます。
 峠を挟んで反対側の神行堂山(しんぎょうどうざん)へのルートも整備し、既存の山道と接続させることで、今年中には6キロメートルの周回コースになる予定です。
 将来的にはチェーンソーなども使って火防線としての整備を行いたいと考えています。
 ところどころに眺望の良い見晴らし場所を設けたいですね。」(卓也さん)

また、作業が進み、道幅がもっと広がれば開けた明るい山の環境を好む生き物も入ってこられるようになるそうです。
山中の空き地は格好の狩場。
町のシンボルバードであるイヌワシなどの希少猛禽類も増えるかもしれない、と
卓也さんは言います。

今も豊富な生態系を保つ南三陸の山林。
作業後、皆で確認した定点カメラの映像にも野生動物の姿が写っていました。
この豊かさを守るためには自然と人の両方の力が必要です。
“火防線刈払いプロジェクト”は4月以降も、大学のゼミ・団体等と連携しながら活動を続けるそうです。

2台の車の間で、赤や黄色のジャンパーを着た男女数人が地面にしゃがんだ男性が持っているパソコンの画面をのぞき込み、笑顔で楽しそうに見ている写真
  • 南三陸ネイチャーセンター友の会 http://rias-nature.jp/
  • 鈴木卓也さんのブログ かくれ里でcaranke!!

(日比谷)

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