4人の中学生の生徒たちが緑のジャージの上に白衣とマスクを着け、右側の3人の生徒が手にそれぞれ料理の載った皿を持ってカメラに向かって並んで立っている写真

南三陸町の特産品「ホヤ」を使ったレシピづくりに一緒に取り組んできた歌津中学校と共立女子大学(東京都千代田区)による「1日レストラン」が11月12日(金曜日)、その名の通り1日限定でオープンしました。地元の特産品でありながら参加した生徒のほとんどが食べたことなかったホヤ。試行錯誤を重ねて誕生したレシピは、ホヤを苦手な人にも食べてもらいたいという思いが込められたアイデア料理ばかりでした。生徒たちの工夫が光る料理の数々、歌津中×共立女子大の「1日レストラン」にお邪魔しました。

連携協定がきっかけで始まった「1日レストラン」

町と共立女子大学・共立女子短期大学が2019年に連携協定を結んだことをきっかけに始まった「1日レストラン」。協定は教育・学術研究の推進や地域産業の活性化、人材の交流と育成などの連携を目的に結ばれ、これまでに南三陸の食材をテーマにした研究や学校給食の献立考案など、さまざまな活動が行われてきました。歌津中学校との「1日レストラン」は昨年に引き続き2回目です。この取り組みは1年生の家庭科の一環として行われ、町の水産資源を題材に「食文化と環境の理解」「南三陸への愛郷心」「課題解決力の向上」を身につけることを目的としています。

調理室でたくさんの生徒たちが白衣とマスク、帽子を身に着け、調理器具や食材が並べられている調理台の前に並んで前を向き、話を聞いている様子の写真

歌津中学校の1年生24名がプロジェクトに参加

まずは「ホヤ」を知る、そして食べてみることから

1年生の生徒24名はメニューの考案にあたり、地域の産業や食材について学ぶ機会を持ちました。「ホヤ」は地元の特産品でありながら、食べたことがない、食べたことはあっても独特のにおいや味が苦手という生徒がほとんど。しかし、長引く韓国への禁輸措置のため大量のホヤが破棄されている現実を知り、地元で消費することの大切さに気づきました。そして、自分たちがホヤを知って、食べてみること、そして好きになることが、たくさんの人に魅力を伝える時に役立つと考えました。

白衣と帽子、マスクを着けた生徒が、フライパンと鍋が置かれた調理台で作業をしており、1人の生徒が鍋でゆでたホヤを長い菜箸ですくっている調理作業中の写真

ホヤは下ゆですることで、いやな臭みが和らぐそう。いろいろな食べ方を研究し、その成果を調理にいかします。

生徒たちは5班に分かれ、どんな人に食べてもらいたいかターゲットを決め、メニュー考案に取り掛かりました。「ゆでる」「焼く」「生」などあらゆる方法でホヤを食べてみて、切り方や調理法で風味や食感がどう変化するのかを調べ、おいしく食べる方法について意見を出し合いました。

具材や手順に関する手書きのメモやコメントが青と黒のペンで書き込まれている、料理手順の紙が写真付きで掲示されている写真

実際に試作をして自分たちで気づいたことや大学生からのアドバイスを書き込み、おいしさをとことん追求!

白衣を着用した4人の女性が壁の前に並んで立ち、右端に立っている割烹着を着た三角巾着用の女性が右手を出して生徒たちに向かって紹介をしている様子の写真

東京から駆けつけた共立女子大学家政学部食物栄養学科の近堂知子教授(左)と同学科の4年生

共立女子大学からこのプロジェクトに参加したのは家政学部食物栄養学科の4年生4名。中学生たちが考えたメニューをもとに、栄養学の観点からアドバイスをし、レシピを一緒に考えました。大学生にとってもホヤを扱うのは初めて。参加した学生は「最初見たときは貝なのか魚なのかわからない不思議な生き物に驚いた。」「食べたことのない食材で調理をするのは大変だった。栄養面だけでなく、水産業や食文化など、食材の背景についてもいろいろと調べた。」と振り返ります。オンラインでの話し合いを6回ほど重ね、お互いに試作もしながらついにメニューが完成。11月12日(金曜日)に大学生たちが来校して一緒に調理、マスコミや学校関係者などにお披露目されました。

アイデア満載!「1日レストラン」のホヤメニュー公開

それでは歌津中と共立女子大学の学生が工夫を凝らして考えたとっておきのホヤレシピ、その一部ご紹介しましょう。ユニークなネーミングにもご注目!

白衣と帽子をかぶった男子生徒が黒いマスクをつけて、完成した具材を巻いたクレープを手に持ちカメラに向かって見せている写真

「ホヤットクレープ」 ホヤとクレープの組み合わせには先生や大学生たちもびっくり!でもこれが意外と合うんです。みんなが好きなクレープにホヤを入れれば食べやすくなるのでは?という発想から生まれました。ほうれん草とベーコン、細かく刻んだホヤを炒め、塩・コショウ・レモン汁で味付けをし、ほんのり甘いクレープ生地で包み、食べやすいようにひとくちサイズに仕上げました。

皿にたくさん並んでいる、ほうれん草とベーコン、細かく刻んだホヤをクレープ生地で包み、つまようじで留めたホヤットクレープをアップで撮影した写真
小さい四角に切った厚切りの食パンの上に、アスパラガスや細かく刻んで炒めたホヤ、砕いたポテトチップスを乗せてこんがり焼き、刻み海苔をトッピングした「ホヤのびっくりホヤパンマン」が並んでいる写真

「ホヤのびっくりホヤパンマン」ホヤは細かく刻んで食べやすくし、バター醤油で炒めました。食パンに炒めたホヤ、アスパラガス、のり、砕いたポテトチップスをトッピング。オーブンでこんがり焼いて出来上がり。スナック感覚で食べられるよう食パンを4等分にしたのがポイント。のりの風味とバター醤油味の香ばしいホヤがよく合います。

白い器に、もやし、小松菜、焼き海苔、茹でたホヤなどが混ぜられた「ホナムルムナ」が盛り付けられた写真

「ホナムルムナ」ホヤと町内産の小松菜を主役にしたナムル。ホヤは茹でて独特の臭みを和らげ小さく切り、小松菜、もやし、ねぎ、焼きのりを合わせ、しょうゆベースのたれで味付けします。オレンジと緑のコントラスト、ごま油の香りが食欲をそそる一品です。

ホヤにチーズをたっぷり詰めて大葉を巻き、爪楊枝をさし衣をつけて揚げた料理が、カットされた状態で皿に盛られている「ホヤチーズフライ」の写真

「ホヤチーズフライ」丸ごと大きなホヤにチーズをたっぷり詰めて大葉を巻いてフライに。チーズのコクと青しその香りはホヤとの相性抜群!ホヤの食感がダイナミックに楽しめてホヤを好きな人も苦手な人もおいしくいただけます。

白い丸皿にご飯、白いお碗に細かく刻んだホヤとひき肉や野菜が入ったドライホヤカレーが盛り付けられ、木目調の机の上に並んでいる写真

「ゆうちゃんリゾートのドライホヤカレー」ホヤが苦手なクラスメイト「ゆうちゃん」でも食べられるレシピをとみんなが好きなカレーにホヤを使いました。カレー粉とホヤを最初に炒めることでホヤの嫌な臭みを消すなど工夫を凝らした力作。果たしてゆうちゃんは食べられたんでしょうか…!?

木目の机の上に、ホヤを使用したピザやチャーハン、サラダ、クレープ、パンなど様々な料理が並んでいる写真

テーブルに並びきれないほどのホヤ料理の数々。

地域食材の新たな魅力を発見!

ホヤ料理を食べた大人たちからは「おいしい!」「おいしい!」と絶賛の嵐。調理した中学生からも「最初はほとんどの人がホヤが苦手だっだのに、できた料理を食べておいしいと言ってくれたのがうれしかった。」とか、「工夫すればホヤはいろんな料理に合うことが分かった。」「若い人に広めたらもっと食べ方のバリエーションが増えて、地域に貢献できるのではないか。」など、前向きな声が寄せられました。今回の授業を通して地域食材の魅力を発見できたようです。

給食用の白衣を着た3人の男子生徒が、机に並べられた沢山のホヤ料理を前にして座っている試食の様子の写真

お待ちかねの試食タイム。

同大学の近堂知子教授は、「大学生にとってもいい経験になった。今回は地元の子供たちに地域食材の魅力を知ってもらう取り組みだったが、今後は南三陸の食文化の魅力を東京の人に広められるようなプロジェクトもやってみたい。」と意欲を示しました。

共立女子大学との地域連携プロジェクト、次は南三陸の食材でどのようなメニューが誕生するのでしょうか。今後の活動も楽しみです。

白衣や割烹着を着た5人の女性たちと、おそろいのエコバッグを持った緑色のジャージを着た生徒たちが教室で正面を向いて並んでいる集合写真

写真提供:歌津中学校

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