「いま、碧き海に祈る 愛するあなた 安らかなれと」と言葉が刻まれた慰霊碑の前で、男性と女性がが黙祷や祈りを捧げている様子の写真

八幡川西側の区域に整備していた「震災復興祈念公園」が12月17日に一部開園。東日本大震災の犠牲者を悼み、その記憶と教訓を風化させることなく次の世代に受け継いでいく場として期待されています。

「祈りの丘」「復興祈念のテラス」などが完成

志津川地区に整備を進めてきた「震災復興祈念公園」が12月17日に一部開園しました。祈念公園全体で6.3ヘクタールのうち、開園したのは、志津川湾を望む高さ約20メートルの築山にある「祈りの丘」と、旧防災対策庁舎、さんさん商店街を望む「復興祈念のテラス」など、1.2ヘクタール。

12月17日には、関係者が集うなか、「復興祈念のテラス」と「祈りの丘」の除幕式が執り行われました。

「のちに1000年に一度と呼ばれることになる大震災が発生してから、今日で3203日。ここまで決して平たんな道のりではなかった。多くの町民がまぶたを腫らし、額に汗し、またご支援いただいたみなさまに感謝し、苦闘した日々の積み重ねだった。今日、明日を生きたかった人たちの想いを、私たちは決して忘れてはいけない」と佐藤仁町長は式辞を述べました。全面開園は、南三陸さんさん商店街と公園を結ぶ中橋が完成する2020年秋頃を予定しています。

津波の被害を受けた建物を背景に、黒いスーツを着た町長が、マイクの前でスピーチをしている写真

祈念公園を紐解く5つのキーワード

今回開園した1.2ヘクタールを含む6.3ヘクタールもの復興祈念公園は、「追悼」「継承」「感謝」「想像」「協働」という5つのキーワードに基づいて整備が進められています。

1.東日本大震災およびこれまでの自然災害による犠牲者を悼み(追悼)、

公園のランドマークとなる築山「祈りの丘」の頂上には、犠牲になった町民と町内で亡くなった人をあわせた804名の名前を記した名簿を納めた「名簿安置の碑」が、追悼の言葉を添えて設置されています。犠牲者の御霊に向かって手を合わせ、祈りをささげる場となります。

いま、碧き海に祈る 愛するあなた 安らかなれと

東日本大震災の追悼記念公園に設置された「いま、碧き海に祈る 愛するあなた 安らかなれと」と刻まれたモニュメントの写真

「名簿安置の碑」に刻まれたメッセージは公募から選ばれました。刻まれたメッセージを考案した鈴木清美さんは「碧き志津川湾に向かって、町民も町外から訪れた人も、おだやかに手を合わせる場所になってもらえればうれしい」と話しました。

右側に白い花で作られた献花用のリースが置かれ、黒いジャンパーとネクタイを身に着けた鈴木清美さんの写真

鈴木清美さん

2.震災の記憶と教訓を風化させることなく次世代に受け継ぎ(継承)、

公園の中心には、植樹された桜が並び、「記憶の広場」と題された広場があります。そこには、失われたまちや人々の記憶を伝えていくために東日本大震災発災前の志津川地区の地図を石板に刻んだメモリアルレリーフが設置されています。

屋外に設置された大きな円形の、地図を石板に刻んだメモリアルレリーフを見下ろしている人々の写真

かつての町並みを思い返し、語り継ぐ場として期待される

また「祈りの丘」へと続く道のりは「記憶のみち」として整備され、東日本大震災の発生から最大津波が南三陸町に襲来するまでの出来事が、時間の経過に沿って刻字されています。頂上に向かっていくなかで自然と東日本大震災の記憶を後世に伝える場となります。

黒いアスファルトとグレーの縁石に囲まれ、「大きな津波が漁港に押し寄せ、防波堤を越える」「2011.3.11 15:25」と書かれた記念プレートの写真

祈りの丘を登りながら当時の状況に想いを馳せる「記憶のみち」

「記憶のみち」を登りきると「高さのみち」として平たんな道が現れます。志津川地区の市街地に襲来した津波の平均高さ(海抜16.5メートル)に設定された「高さのみち」を歩き、周囲を眺めることによって、押し寄せた津波の高さを体感することができます。

左側に津波の被害を受けた建物が保存され、広々とした開放的な風景の中に整備された遊歩道の写真

海抜16.5メートルの高さで志津川地区を一望して、津波の高さを実感できる「高さのみち」

3.大自然への畏敬とともにその豊かな恵みを讃え(感謝)、

「祈りの丘」は追悼の場であるとともに、大きな恵みをもたらした大自然への感謝の場でもあります。

「祈りの丘」の頂上は、南三陸を象徴する「荒島」「椿島」「神割崎」がほぼ一直線に並ぶ位置にあります。さらに、保呂羽山・保呂羽神社と上山八幡宮をつなぐ軸が交わります。「海の軸」と「山の軸」が交わるこの場所は、古代から海と山、その自然からの恩恵の象徴となる場所に位置しています。

クレーン車やトラックが並び鉄骨の構造物が新たに建設され、赤茶色の骨組みだけが残った4階建ての建物があり、東日本大震災の被災地で整備が進められている様子の写真

整備中の中橋が完成することで、さんさん商店街の往来や上山八幡宮にもアクセスが向上する

4.復興をなしとげた町の未来の姿を人々とともに想い描く(想像)、

祈りの丘のふもとに位置する「復興祈念のテラス」には、震災記憶の伝承として未来に向けたメッセージを刻み、訪れた人々が復興を祈念する場となります。

小学1年生だったあの日、この目でみたものは
まだ私の中で鮮明に生き続けている。
どうかこの町が 大好きだったあの日のように
活気と人々の笑顔であふれる町に
なりますように。

円形の石製に「小学1年生だったあの日、この目で見たものは まだ私の中で鮮明に生き続けている。どうかこの町が大好きだったあの日のように、活気と人々の笑顔であふれる町になりますように。」黒い文字でメッセージが刻まれ、奥に東日本大震災の被災地で整備が進められている様子の写真

メッセージを考えた佐沼高校1年生西條瑠奈さんは「活気あふれる町になってほしい」とこれからの南三陸町の発展に期待を寄せました。

背景には、赤茶色の骨組みだけが残った4階建ての建物があり、ブレザー姿の女子学生が正面のマイクに向かって話している様子の写真

佐沼高校1年生西條瑠奈さん

この「復興祈念のテラス」からは、旧防災対策庁舎の先に新しい市街地である「南三陸さんさん商店街」が重なって見えます。震災の記憶とともに、復興とこれからの未来を想像する場となります。

5.そのための場を人々の協働によって創りつづける。(協働)

公園の東側には、地域の樹木を主とし、育てていく「みらいの森」エリアがあります。町をはじめとして、関係企業・団体などの植樹活動等も検討されていて、訪れた人の憩いの場づくりを協働で創り、維持していく場となる予定です。

手前には、木々が数本植えられ、広大な造成地と震災復興祈念公園の風景を撮影した写真

インフォメーション

  • 開園時間 9時~16時
  • 公園面積 約6.3ヘクタール(約1.2ヘクタールが12月17日に開園)
  • 全体開園 2020年秋頃予定

2020年3月9日追記)
工事の進捗に伴い、復興祈念公園の開園エリアが拡張されました。防災対策庁舎のすぐ手前まで行けるようになったほか、庁舎西側に位置し、震災伝承の活動に使ってもらおうと設けた「語り継ぎの広場」も開園となりました。

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