防災訓練中に、床に倒れている男性に対してオレンジ色のベストを着た3人の大学生が応急手当の練習を行い、もう1人の男性が立って指示を出している様子の写真

東日本大震災を教訓に防災・減災の取り組みに力を入れる南三陸町。町内での展開だけでなく、学生や企業向けの研修としても、防災・減災教育のプログラムを実施しています。南三陸町ならではの防災・減災教育とは?

「災害時シミュレーションプログラム」を新潟の大学生が体験!

「緊急地震速報です。強い揺れに警戒してください」。室内に鳴り響く警報音。3月のある寒い日の午後、新潟薬科大学の教室で震度6弱の地震に見舞われた学生たち。「地震発生時、みなさんはどういう行動をとりますか?お手元にある黄色い付箋に書き出してください」。

一般社団法人南三陸研修センターが実施する「災害時シミュレーションプログラム」の冒頭です。都市での広域災害発生を想定し、主体的な行動をとる意識を育むためのシミュレーションプログラムで、企業研修や学生の学びに活用されてきました。2017年6月18日、東日本大震災の被災地でボランティア活動を行う新潟薬科大学災害ボランティア部の15人が、プログラムを体験。災害発生時の行動・状況について考えるグループワークや、避難所での時間を体感するロールプレイングなどを行いました。

新潟薬科大学 災害ボランティア部』と書かれたオレンジ色のビブスを着た5人の大学生が、机を囲んで座り、災害に関する意見を付箋に書いたり話し合ったりしているミーティングの様子の写真

「災害時シミュレーションプログラム」のセッション1はグループワーク。地震発生直後、自分たちはどんな状況に置かれているだろうか? 想定される状況をグループで話し合い、付箋に書き出していく

ホワイトボードに貼られた青色と黄色の付箋に、『水道・ガスが止まる』『自動ドアが作動しない』『家族・友達の安否が心配』など、災害時の不安がたくさん書かれている写真

想定される状況と、その状況下で自分はどういう気持ちになるか・どういうことをするかを付箋に書き、グループごとに貼り出す。ほかのグループのものも見回って、全体シェアを行った

東日本大震災にもとづいた臨場感あふれる内容で、学びを深める。

セッション2は避難所を想定したロールプレイング。さまざまな状況を抱えた人がやってきて、学生たちは対応を迫られます。ついには停電…。臨場感あふれる避難所体験でした。

10人ほどの大学生がオレンジ色のベストを着て輪になって、けが人役を支えながら応急搬送の訓練をしているのを見学している様子の写真

頭から血を流し右足を引きずった負傷者を救護。どうしたらよいのか戸惑うメンバーも

6人の大学生がオレンジ色のベストを着て円になって座り、非常食をどう配布するか手に取りながら考えて話し合いをしている様子の写真

懐中電灯、毛布、非常食、ラジオ、水などの災害用備蓄をどう配布するか考える学生たち

続いてのセッション3では、トイレ(=衛生管理)や運動不足、ノロウィルス、プライバシーなど、避難所生活で起こるさまざまな問題をグループごとに話し合い、発表。これらの問題は、東日本大震災の避難所で実際に起こったことです。各グループの発表に対し、避難所生活を経験した阿部忠義さん(南三陸研修センター 理事)が、実際はどのように対応したのかを語ってくれました。

5人の若者が白い机を囲んで座り、1人が立って話をし机の上にはマーカーと紙に書かれた「トイレをどうしよう」をテーマに話し合いをしている様子の写真

水がストップしてトイレが詰まってきた…。どう対処するか、使い方をどう決めるかをグループごとに話し合い、発表する

阿部忠義さんがホワイトボードに貼られた建物の間取り図を指差しながら話をしている写真

東日本大震災での避難所生活について語る阿部忠義さん(写真右)

このように、「災害時シミュレーションプログラム」には、東日本大震災での実体験にもとづく部分が多々あります。臨場感あふれる具体的な体験談が聞けたことで、学生たちは学びをさらに深めていた様子。最後に、「想定をすること、過去の事例から学ぶことが大事。万が一災害に遭ったときに、みなさんには“行動できる人”になってもらいたいと思います」と締めくくりました。

南三陸町で体験することに意味がある防災・減災教育プログラム。

南三陸町で体験した「災害時シミュレーションプログラム」は、新潟薬科大学災害ボランティア部の学生たちにとってどのようなものだったのでしょうか?

部長の青山美沙望さんは、「部活でカードの避難所ゲームはやったことがありますが、今回のシミュレーションプログラムは本格的なものでした。
避難所のロールプレイングは突然始まったので、最初は戸惑ってしまいましたが…。被災地にまだ行ったことのない人にも知ってもらうため、今回の体験を発信していきたいです」と話しました。

新潟薬科大学 災害ボランティア部』と書かれたオレンジ色のビブスを着た青山美沙望さんが、外の飲食スペースで友人と並んで座り、海鮮丼と味噌汁を前に笑顔で楽しんでいる写真

友だちに誘われて入部した青山美沙望さん。現在 部長を務めている

小学校2年生のときに中越地震で被災し、避難所生活を経験した松井智幸さん。避難所のロールプレイングでは本部の立ち上げを提案しました。「だれかまとめる人がいないと混乱してしまうので、本部が必要だと思ったのです」と理由を説明。「とても濃い内容のプログラムで、勉強になりました」と満足していました。

屋外で「新潟薬科大学 災害ボランティア部」のビブスを着た松井智幸さんを写した写真

自身も避難所生活を経験している松井智幸さん

避難所のロールプレイングで赤ちゃん連れの母親役を務めた、気仙沼市出身の小野寺唯さんにも話を聞きました。「あのような場では、困っている人に声をかけたり動いたりするのは勇気がいると思いますが、みんなが声をかけてくれたり配慮してくれたりしたのがうれしかったです。実際に避難所生活を経験された方のお話が聞けて、自分では考えつかないようなことも知ることができました。今回の体験を含め、これまでの部での活動を後輩に引き継いでいきたいです」。

「新潟薬科大学 災害ボランティア部」のビブスを着た小野寺唯さんとスーツ姿の浅田真一先生が笑顔で並んで写っている写真

小野寺唯さん(左)と顧問の浅田真一先生(右)

学生たちは「災害時シミュレーションプログラム」から多くのことを学んだようです。顧問の浅田真一先生は、「南三陸町でこのようなプログラムを体験して、今までは気づけなかったことも見えてきたのではないでしょうか。新潟も災害が多い地域なので、今後もお互いに学び合っていきたいですね」と話しました。

日本全国どこでどんな災害が起こるかわからない時代において、このような防災・減災教育は非常に重要です。南三陸町では、被災地ならではの学びや体験を、これからも全国に向けて発信していきます。

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