「南三陸少年少女自然調査隊」と書かれた横断幕を広げ、海辺で青い帽子をかぶった子どもたちが手を挙げたりピースサインをしたりしている集合写真

町の自然環境や文化を体験しながら魅力を発信するために、町内の小中学生が参加する「南三陸少年少女自然調査隊」。5月13日(土曜日)に折立海岸で生きもの調査を実施し、39種類の生きものが確認されました。中には宮城県のレッドデータブックに掲載されている希少種も発見されました。

5年目の活動には小中学生17名が参加

「南三陸少年少女自然調査隊」は、2018年10月に志津川湾がラムサール条約湿地に登録されたことをきっかけに誕生したエコクラブです。2019年2月、志津川湾の登録を記念して、全国のラムサール条約湿地で活動する子どもたちが湿地の魅力を学ぶイベント「KODOMOラムサールin南三陸町」が開催。町内から9名の小学生が参加し、日本全国のラムサール条約湿地で活動する子どもたちとさまざまな体験活動を通して交流しました。

その時に参加した町内の子どもたちから「もっと南三陸町の自然や文化を学びたい!」という声が上がり、2019年5月に南三陸町の自然や文化を体験しながら学ぶ「南三陸少年少女自然調査隊」が発足しました。

5年目となる今年度のメンバーは小学生14名、中学生3名の計17名で活動が開始されました。

海辺で「南三陸少年少女自然調査隊」の横断幕を掲げ、青い帽子をかぶった子どもたち、大人のスタッフたちが笑顔で並んだ集合写真

メンバー初顔合わせ。折立海岸干潟で生きもの調査。39種類を確認

今年度の活動初日となった5月13日は、戸倉地区の自然環境活用センターで、調査隊メンバーの初顔合わせ。昨年度から引き続き隊員になった人に加えて、新メンバーもいっしょに自己紹介やゲームなどを通じて、隊員同士の交流が図られました。

教室内でマスクをした講師が指示棒を使って大型スクリーンに写した地図を指しながら席に座った子どもたちに説明をしている様子の写真
小学生3人がグループで机を囲み、真剣に話し合いをしていて、机には青い帽子やハンドブック、メモ用紙が置かれている写真

さらに、南三陸町の特徴や干潟に関するレクチャー、調査方法の共有を行った後、戸倉地区の折立海岸干潟で生きもの調査を行いました。

海辺で青い帽子をかぶった子どもたちが、バケツを手にスタッフの話を聞きながら地面の生き物を観察している様子を写した写真

隊員は干潟に降りると、地表面を観察したり、土や泥を掘り起こしたり、石を持ち上げたりしながら生きものを採集。自然環境活用センターに持ち帰り、研究員やネイチャーセンター友の会のメンバーなどの指導を受けながら確認を行っていきました。

長靴を履いて干潟に貼った二人の児童が、青いバケツを手にしゃがんで水中を調べている様子の写真
縞模様の長袖シャツを着た少年が白い手袋で小さな生き物を持ち上げ、笑顔で見せている様子の写真
青いバケツを横に置いた児童と大人が、しゃがんで地面に顔を近づけ、熱心に調査している様子の写真
顕微鏡のモニター画面を囲んで数人の児童が集まり、真剣な表情で観察している様子の写真

今年度の活動の大きな特徴としてあげられるのが調査隊OGが活動に参加し隊員の活動をサポートしていたことです。これまで中心となって活動してきた彼女たちも春から高校生。それぞれの進学先でも調査隊の活動を生かして活躍。なかには南三陸高校の自然科学部に入り、より本格的に南三陸町の自然調査に挑むメンバーもいるなど、これまでの4年間にわたる調査隊の継続的な活動が一つ花開いていることを実感させられます。

ピンクのシャツを着たOGが、水槽からカニを持ち上げて見せながら、虫眼鏡を持った男児と会話している様子を写している写真

調査隊OGが隊員の活動をサポート

また調査隊メンバーにとっても、身近なお姉ちゃんたちが活動に加わりサポートすることでより身近に楽しく学べる状況になっているようでした。

「たくさん捕まえられてうれしい!」「30分じゃ足りなかった。もっとやっていたい!」などの声が。

種同定の結果、二枚貝や巻貝、カイメンや、ゴカイ、ヤドカリやカニなど39種類もの生きものが確認されました。
この中でクモリアオガイ、イシダタミ、アサリ、ケフサイソガニは、発見率70%を超えて発見。折立海岸の『優占種(その場所に多く住んでいる主要な種)』であると分かりました。

室内で、児童が青い表紙の図鑑を指さしながら読み、横からOGが覗き込んでいる写真

「宮城県のレッドリストに掲載されている巻貝のツブカワザンショウ(絶滅危惧2類)と二枚貝のサビシラトリ(準絶滅危惧)も発見されました。今回の調査は完全に潮が引ききっていない状況で確認された種数としてはまずまずの数と考えられる」と研究員の阿部さんは振り返ります。

町民有志らが環境改善に向けた活動を行う折立海岸干潟

潮が引いた海に干潟が広がり、遠くに島や養殖のブイが見える静かな海の風景を写している写真

活動場所となっている折立干潟は震災前、潮干狩り場として町内外から親しまれていた場所。しかし復旧工事において砕石を投入するなどの原因によりアサリが育ちにくい環境となっていました。アサリが育ちやすい環境を取り戻すべく、昨年から地元漁協女性部や町、県がチームを組み、採石やゴミ、流木などを撤去するなど活動を展開しています。

生きものが戻ってくる環境へ。子どもたちの活動もあわせて今後の折立干潟の変化にも注目していきたいと思います。

町内のさまざまな資源観察はもちろん、地域外との交流の予定も!

今年度も月に一度のペースで活動し、町の森里海、さらには歴史文化などを体験しながら魅力を探し伝えていきます。

子どもたちからは「鳥の観察したい」「化石の発掘、体験をしたい!」「釣りしたい」「スノーケリングしたい」「海や川の魚を観察したい」など積極的な声があがっていました。

今年度は5周年を迎えることを記念して秋にシンポジウムを開催予定。新型コロナウイルスの影響も徐々に落ち着きつつあるなか、より飛躍の一年となることでしょう。

室内で二人の男性が、6枚の絵が貼られた大きなトロフィーがプリントされたパネルを掲げている写真

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