舞台の上でスーツ姿の関係者の男性3人と、白衣を着て魚の帽子をかぶったさかなクンが並び、さかなクンが手書きしたカラフルな魚や海のイラストを一緒に持って観客に見せている、シンポジウムの様子の写真

今年10月のラムサール条約登録を目指している志津川湾。機運を高めるためにラムサール条約シンポジウムが1月20日(土曜日)に南三陸町ベイサイドアリーナで開催されました。さかなクンなど豪華ゲストと過ごす時間は、「世界の志津川湾」の価値を再確認する時間となりました。

ラムサール条約ってなに?

ラムサール条約は1971年にイランのラムサールで開催された国際会議にて採択された湿地に関する条約です。正式名称は、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」といいますが、採択の地にちなみ、一般に「ラムサール条約」と呼ばれています。条約は湿地の保全と再生、そして賢明な利用(ワイズユース)の推進を目的としています。各国の重要な保全湿地を「登録地」に指定し、国際的にその価値を明らかにする取り組みを行なっているのです。

自然豊かな藻場があり、国の天然記念物であるコクガンなどの水鳥の越冬地となっている志津川湾。世界的に見ても貴重な環境であり、環境省に条約申請を申し入れ、国内候補地に選ばれています。
南三陸町では今年10月にアラブ首長国連邦のドバイで開かれる条約締約国会議での登録を目指しています。その登録に向けて機運を高めるために南三陸町ラムサール条約シンポジウムが開催され、町内外から約250名の方々が集いました。

舞台のスクリーンにラムサール条約の全文を投影しながら講演する人物を写した講演の様子の写真

南三陸の誇るべき自然環境

「南三陸の海の『海藻』にスポットをあてることによって南三陸の海の特徴がわかってくるんです。山に森があるように、南三陸の海には海藻の森が広がっている」と話すのは、南三陸町ネイチャーセンター準備室阿部拓三さん。タクゾー博士と親しまれる南三陸町のお魚博士です。

演題に立ち、マイクを持って話をしている阿部拓三さんの写真

親潮と黒潮が混ざり合い、さらに津軽暖流も入ってくる志津川湾はそれぞれの海流にいる生き物が流れ込み、多様な生き物が集まる場所となったのです。その代表が「アラメ」と「マコンブ」だそうです。
「暖かい海を代表する海藻の『アラメ』と、冷たい海を代表する『マコンブ』が混在するのが南三陸の海の特徴。これは非常に珍しいこと」とタクゾー博士は話します。

海中で撮影された昆布やワカメなどの海藻が生い茂る豊かな海藻群落の写真

「マコンブ」が群生する南三陸の海底

こうした多種多様な海藻が見られる志津川湾は、環境省が選定する「日本の重要湿地500」にも選ばれ、平成22年には「ラムサール条約登録湿地潜在候補地」に選定されていました。これが当町がラムサール条約登録を目指す大きなきっかけとなったそうです。
こうした貴重な海藻の森を目指して遠くシベリアから冬を越すためにやってくるのが、国の天然記念物で絶滅危惧種にも指定されているコクガンです。 世界に7000羽から8000羽しかいないなか、毎年100羽から200羽が志津川湾で冬を越します。この時期志津川湾で見られるコクガンの姿は、志津川湾に豊かな藻場があることの証しなのです。

水辺に数羽のコクガンが並んでいる様子を写した写真

この時期、南三陸の海岸沿いではコクガンの姿がよく見られる

条約登録は「世界の志津川湾」になるということ

「ラムサール条約に登録されるということは、”南三陸の志津川湾”が”世界の志津川湾”になるということ。”ラムサールブランド”を手に入れてるが、それをどう生かすかが大切になってくる。志津川湾の価値を、将来も損なうことなく維持し、もっと豊かになるように利用していくことが重要」と話したのはラムサール条約の普及活動を行っているラムサールセンター事務局長の中村玲子さん。

そのために重要なこととして「人を育てること」と中村さんは呼びかけ、「ASC、FSCなどこれまで成果をあげている取り組みと合わせて、先進的なモデルとして世界にその取り組みを発信してほしい」と話しました。

壁や天井に鳥の絵が飾られた会場内に、いくつものテーブルが並び、子どもから大人までの参加者がスタッフと一緒に工作などのワークショップを楽しんでいるイベント会場の様子の写真

シンポジウムと並行して、子どもから大人まで気軽に楽しめるワークショップも多数企画されていた

シンポジウムでは地元志津川高校自然科学部のみなさんによる成果発表も行われました。志津川高校自然科学部は、去年の5~6月に震災以来初めて八幡川河口の干潟調査を実施し、レッドリストに登録されている貴重な生物も多数発見。その取り組みは「第17回環境甲子園」で奨励賞を受賞。「どのように変化をしていくのか継続して調査を続けたい。そして干潟の重要性を町民に伝えていきたい」と話す地元高校生の姿に頼もしさを感じる場面でした。

シンポジウムで壇上で、志津川高校自然科学部の二人の学生が発表をしている様子の写真

自然と共に生きる南三陸の成果の象徴に

シンポジウム第二部として2008年から志津川湾を訪れていたさかなクンの「さかなクンのギョギョッとびっくり 南三陸のおさかな教室講演」もありました。「10年も経つということにとても感慨深い気持ちです」と話すさかなクン。
タクゾー博士とのトークでは、南三陸の海に生きるさまざまな魚のイラストやさらには南三陸の海で定置網にかかった本物の魚を使ったクイズなどで、子どもたちを中心に大盛り上がり。
「南三陸の海の豊かさは、陸の栄養があって、大地のすばらしさがあって、空気の美しさなど、海だけではなく全部がつながっているからこそなんだなと実感しました。南三陸はすばらしい大自然がいっぱいだなって心がウキウキします」と声を弾ませます。

ホワイトボードに魚の絵を描きながら、マイクを持って話をしているさかなクンの写真

タクゾー博士はラムサール条約の意義について「ラムサール条約の大きな特徴は、ただ自然を守るだけではく、湿地を漁業や観光に有効に利用したり、子どもたちの教育に役立てて、自然の魅力を発見し伝える力を育むという3つの柱があること。こういったことは地域の魅力を知って、共有して、地域に誇りをもつことに非常に重要なことと考えています」と話します。

震災後「森里海ひと いのちめぐるまち南三陸」というビジョンを掲げた南三陸町。ラムサール条約への登録は、震災前から脈々と受け継がれてきた自然と共に生きる南三陸の成果のひとつ。「世界の志津川湾」をどう活用していくか、それこそが私たちの本当の真価が問われることなのかもしれません。

入り組んだリアス式海岸と森林が広がる風景を空撮した自然豊かな沿岸地域の全景の写真

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