川の中に入った2人の大人と2人の女の子が網を使って生きものを捕まえている様子を写している写真

7月20日に南三陸町内の小中学生で構成する「南三陸少年少女自然調査隊」と志津川高校の自然科学部の生徒が、八幡川下流域の生物調査を実施。震災後、大きく環境が変化する中、ニホンウナギなど絶滅危惧種にも指定される貴重な種も発見されました。

南三陸の自然を発信!南三陸少年少女自然調査隊

2018年10月、南三陸町志津川湾がラムサール条約に登録されました。登録を記念して、2019年2月に開催された「KODOMOラムサール」。開催地となる湿地の魅力について、学び、考え、行動する学習教育プログラムには、熊本から北海道まで9のラムサール条約登録湿地から小学4年~6年生32名が参加をして、南三陸町の宝を考えていきました。

KODOMOラムサールに参加した子どもたちに加え、新規の参加者も交え、町の自然環境や歴史を子どもたちが学び、発信する機会を作るために「南三陸少年少女自然調査隊」を結成。調査隊には小学4年から中学1年までの14名が参加し、月に1度のペースで活動を実施しながら、同じくラムサール条約湿地に登録された地域の子どもたちが活躍する滋賀県琵琶湖との交流、2020年2月に東京で開催予定の「KODOMOラムサール」への参加を予定しています。

志津川高校自然科学部の生徒と八幡川を生物調査

その「南三陸少年少女自然調査隊」の初めてのフィールドワークが7月20日に実施されました。今回実施したのは、南三陸町志津川の中心部を流れる「八幡川」の下流域の生物調査。この調査は、志津川高校自然科学部の生徒が東日本大震災の被害と、その後の復旧・復興過程における環境変化を調べるために2018年から実施しているものです。

今回は、8名の隊員と、自然科学部の生徒、町関係者が一緒に調査しました。調査をするのは2ヶ所。河口から700メートルほどの志津川小学校下の海水と淡水が混じっている汽水域と、河口から1.5キロメートルほどの志津川中学校下の淡水域。

背景には丘や木々、青空と雲が広がる、草の生えた左岸とコンクリートの右岸に囲まれた八幡川の浅い水辺に複数の人物が立ち、水の中の生きものを採取したりしている様子の写真

海水がまじりあう八幡川下流の汽水域の調査地点

緑に囲まれた八幡川の浅い川の中で複数の人物が帽子や胴長などの野外活動用の服装を着て立っており、網やバケツを持って水中の生き物を採取している様子が写されている写真

八幡川中流域の淡水域の調査地点

「汽水域と淡水域では生息する生物も違ってくる。その違いを、実際に自分たちで生き物を捕獲しながら実感してほしい」と南三陸町自然環境活用センターの阿部拓三さんは話します。

仙台の環境調査会社株式会社エコリスの専門家による指導のもと、「さで網」という道具を川中に入れて生き物を採集します。

実際に川に入って生き物を採集していく活動に子どもたちは大興奮。笑い声や驚きの声が響いていました。

様子背の高い草に囲まれた浅くて泥の多い水辺で、2人の女の子が網のような道具を一緒に持って水中の生きものを捕まえようとしている様子の写真
子どもと大人を含む複数の人物が、帽子や手袋を着用した野外活動の服装で浅い川の中に立ち、男性の右手の上に持った小さな生き物を周囲の子供たちが見たり、触ったりしている様子を写した写真
浅い水辺で複数の人物が数匹の魚が入っている大きな網の周りに集まり、何人かはその様子をカメラで撮影し、他の人は網の中を覗き込んでいる様子が写されている写真

二ヶ所の調査で多様な生物を発見

河口に近い汽水域では、アユ、クサフグ、ヌマガレイ、ボラなどの魚、ヌマチチブやミミズハゼ、シロウオなどハゼ科の魚が見つかりました。さらに、絶滅危惧種にも指定されているニホンウナギの幼魚も発見。ほかにもモクズガニやケフサイソガニなどカニの仲間、ゲンゴロウの仲間であるキベリマメゲンゴロウやカゲロウの仲間、ゴカイの仲間であるイトメなどの多様な水生生物も見られました。

黄色いライフジャケットと帽子を着用した複数の子供たちが、パレットが並んだ折り畳みテーブルの周りに集まり、採取した生きものを見ている様子の写真

採集した生物はパレットに入れてみんなで観察

後ろで他の人々が見ているなか、水と魚の入った透明な容器を手に持っている男性が話をしている写真

株式会社エコリスの旗さん等専門家による解説に子どもたちも興味津々

水がない川の中で、複数の人物がライフジャケットや防水のオーバーオール、手袋を着用して集まり、水の入った容器を持って話をしている男性を他の人たちが熱心に聞いている様子が写されている写真

中流部では、ウグイやアブラハヤのほかに、全国的には珍しく絶滅危惧種に指定されているウツセミカジカも発見されました。モンキマメゲンゴロウ、キベリマメゲンゴロウ、トビケラ、コヤマトンボの幼虫のほか、川の水がきれいで、なおかつ海にすぐに注ぐような川でしか見られないヒメサナエの幼虫など希少な生き物も多く見つかりました。

屋外の水辺付近で、小さな魚が2匹入った透明な四角い容器を持っている男性の周りに、青や茶色の胴長を着た複数の人達が集まっている写真
屋外の草地に複数の大人や子供たちが集まり、小さな魚が入っている透明の容器を持って説明している男性の話を、子供たちが熱心にノートやクリップボードを持ってメモをとっている写真

環境が変化しても多様性を維持する生物

河川堤防の工事のほかにも、震災前は地域住民で川岸に生えているヨシの草刈をしてましたが、震災後は高台移転で近隣に住む人がいなくなり、地域住民による川岸の管理は難しい状況にあるなど、震災前後で、川の形態は、流れそのものも、川岸の環境も大きな変化がありました。

そうした変化が生物にとってどのような影響を及ぼしているのかを観察するために昨年から調査は行われています。

今回の調査のなかで、絶滅危惧種に指定されているニホンウナギを両地点で発見。同じく絶滅危惧種である、シロウオを汽水域で、ウツセミカジカを淡水域で発見しました。

男性が両手で持っている透明な容器の中に入っている細長いニホンウナギの稚魚の写真

全国的には希少なニホンウナギも町内ではよく見られる

とくにウツセミカジカのような川で生まれ、一度海に行って成長してから川に戻ってくるという特徴をもっている、海と川を行き来する「回遊魚」と呼ばれる種が多くみられました。回遊魚は、堰堤(えんてい)がある河川などでは生きていくことができず、八幡川においては魚が成長に従って海と川を回遊できる環境にあることの証明だといいます。

水が入っている透明な四角い容器の中に、採取した薄茶色と濃い茶色の模様がある小さな魚が泳いでいる写真

ウツセミカジカ

また今回確認した種に外来種が一種類もいないことは貴重なことだと話し、大きな河川では確認できる種の半分以上が外来種ということも珍しくないと話します。

阿部拓三さんは「南三陸の川に子どもたちの『わー』『すごい』『見てっ』といった元気な声が戻ってきたことが何よりもうれしい」と目を細めます。「子どもたちには環境が大きく変わっている状況も見てもらって、そうした中でも生物はしっかりと生きているということを実感してほしい。そしてこういった自然もまだ残っているということを誇りに感じて、この町で暮らしてほしい。工事現場やコンクリートはどうしても人を遠ざけてしまうものではあるけれど、身近なところにも沢山の自然があります。その自然環境をみんなで守っていくためにも、まずは身近に感じて、親しんで、楽しんでいただける機会をこれからも提供していきたい」と意気込みを語りました。

浅い川の中に男性と2人の女の子が立っていて、大きな網にかかった生きものを見ている写真
屋外の小さな水辺の中で、「MINAMISANRIKU 南三陸少年少女自然調査隊」と書かれた横断幕を持っている大人や、ピースサインをする子供の参加者が並んでいる集合写真

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