頭に不織布キャップをつけエプロンを着用した5人の女性が横一列に並んでいる写真

キリッと冷たい空気が張り詰める中、入谷童子下の加工場にはお母さんたちの笑い声が響いています。休耕田を活用した農作業と六次化を行うビーンズくらぶは、2019年で結成から10年。豆腐作りを通して「小遣い稼ぎ」と「仲間作り」を行っています。

失敗を繰り返して生まれた人気商品

休耕田を活用して「仲間作り」と「ちょっとした小遣い稼ぎ」ができたらよいよね、と2009年に結成されたのが「ビーンズくらぶ」。入谷地区のお母さん方6名が集まって、豆類の栽培を開始し、2015年には念願の加工場も設立しました。自分たちで育てた豆を使って、余計な添加物を使わずに作る「手作り豆腐」は、濃厚な味わいが好評で産直に並ぶとすぐに完売してしまう人気商品となっています。

透明フィルムに「手造りとうふ」と書かれた4丁の商品が並んでいる写真

11月末に大豆を収穫し、12月から豆腐作りは始まります。収穫した豆の状態だけでなく、加工する日の気温や湿度などによって微妙な調整が欠かせない豆腐作り。

「正直こんなに難しいと思っていなかった。うまく固まらなくてボロボロになってしまったり、とにかく失敗が多かった」と笑うのは阿部恵美子さん。「一年目は豆腐作りに行くのが苦痛で、なんで豆腐始めちゃったんだろうって思うほどだった」と振り返ります。

不織布キャップを被りエプロンや腕カバーをつけた女性が蛇口で水をくみ、手前の女性は完成した豆腐に包丁を使ってカットしている様子の写真

「今でも試行錯誤の連続でうまくいかないときもありますが、成功したときはとてもうれしい」と話す阿部恵美子さん。

それでも毎年回数をこなしていくうちに、コツをつかんできたという阿部さん。

「お客さんにおいしいって言ってもらえることがうれしいし、励みになります。産直でいつも買ってくださる方や、加工場に直接買いに来てくれる人がいるなどうれしい限りですね」

余計な素材は使わずにシンプルに豆本来のうまみを生かす

豆腐作りのこだわりは、自然な豆本来のうまみを生かすこと。そのため余計な添加物は利用せずに、昔ながらの手づくりの工程を大切にします。

「市販されている豆腐にはにがり以外の凝固剤が含まれていることもありますが、ビーンズくらぶの豆腐はにがりのみ。豆乳の濃厚なうまみを存分に楽しんでいただけると思います」

「アオバタマメ」と「ミヤギシロメ」という2種類の豆腐を作っているのも特徴。手間ひまかけてていねいな豆腐づくりを行うため、一回に製造できるのはわずか20丁のみ。シーズン中は毎週金曜日が製造日ですが、多くても100丁ほどとのこと。豆腐一丁ごとに、大豆のうまみも、この地で生きる人々の想いや技術もギュッと詰まっています。

水が入った大きな水色の容器の中に沢山のパックに詰められた豆腐が入って浮かんでいる写真

手作りにこだわる!豆腐ができるまで

腕カバーと手袋をつけた女性が、豆を煮ている大きな鍋をかき混ぜている写真

豆を煮る

鍋で煮た豆を大きな袋に入れ煮汁を絞っている様子の写真

煮た豆を絞り、豆乳とおからに分離します。熱い状態のものを手作業で行います

水色の大きな容器の中に、汁を絞ったばかりで湯気が立つおからがたくさん入っている写真

分離したおから。これも大事な商品となります。

布を敷いた長方形の型に流し込んだ豆乳とにがりを、2人の女性が泡立て器や小さな鍋を使ってかき混ぜている様子の写真

「にがり」を入れた豆乳を型に流し込んでいきます。温度や湿度によって固まり方がまるで変ってくる大事なポイント

型に流し込んで固まったカットする前の豆腐の写真
きれいに正方形にカットされた豆腐が水の中に浮かんでいる写真
腕カバーを着け、手袋をはめた女性の作業者が、白い容器に完成した豆腐を入れている様子の写真

売上金で行く旅行が毎年の楽しみに

2019年に設立から10周年を迎えたビーンズくらぶ。「2019年度宮城県農村活性化女性グループ表彰」で地域社会参画部門「最優秀賞」を受賞するなど、その活動は内外に認められています。

「メンバーは80代後半から50代前半までさまざま。活動開始したときからみんな10歳年をとって身体がしんどいこともあるけれど、わいわいがやがやとお話ししながら作業できることがなにより楽しいんです」と話します。活動を通して得た利益は、メンバーで旅行に行く費用にあてるという。「今年はどこに行こうかね」と話しながら、今年の豆腐作りも始まっています。

高齢化・過疎化に伴い、コミュニティの形成に課題があると言われているなか、農作業と豆腐作りによって絆がギュッと深まった6人の活動に注目が集まっています。

2人の女性の作業者が、豆を煮た大きな鍋から小さな鍋を使って円柱型の容器に移している豆腐作りの様子の写真

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