屋外の明るい春の日差しの中、緑の作業服と紺色の帽子をかぶった阿部勝善さんが、満開の赤や白の花が咲いた木々の前でにこやかに笑って立っており、背景には新緑の山々が広がっている写真

入谷地区で古くから地域の人々に親しまれている「ばば山」。そこを整備して「花見山」にするプロジェクトが、2年前に始動しました。プロジェクトの経緯、花見山への想いについて、阿部勝善さんに話を伺いました。

20年来の桃源郷構想が「おらほのまちづくり支援事業」として実現へ

春はレンギョウに始まり、桜、花桃、八重桜。6月にはヤマボウシ……。入谷地区のばば山を、さまざまな花が季節ごとに咲き誇る「花見山」にしよう! それが「南三陸いりや花見山プロジェクト」です。民間の主体的な事業を町が応援する「おらほのまちづくり支援事業」に、2015年度から採択されています。

枝に満開の花が咲いているソメイヨシノをアップで撮影した写真

花見山に咲いたソメイヨシノ。震災後に寄贈された苗木が育ったもの

花見山プロジェクト実行委員長は、入谷に住む阿部勝善さん。震災前はサラリーマンでしたが、震災で解雇されてしまい、雇用保険をもらいながら専門学校で造園を勉強しました。通信教育で庭園管理士の資格も取得し、ばば山の整備を担うことに。

「ばば山はもともと杉林でした。正確にいうと雑木林になる前の状態で、荒れていたのです」と勝善さんは話します。そんなばば山を「桃源郷にしよう!」という構想が、入谷地区の全戸が加入する「グリーンウエーブ入谷構想促進委員会」で持ち上がりました。20年ほど前のことです。しかし、人手や資金の問題があり、なかなか実現しませんでした。

実現の機運が高まったのは震災後。「支援の一環で、桜の苗木100本をいただいたことが、きっかけになりました」と勝善さん。そして、2015年に「おらほのまちづくり支援事業補助金」を得て、プロジェクトが具体的に動き出したのです。

木製の看板に「花見山プロジェクト」と大きく書かれ、その下にこのプロジェクトの趣旨が説明されていて、背景には斜面に植林活動をしている青い作業着姿の人々と、杉の木が立ち並ぶ森が広がっている写真

2015年7月に始動した「南三陸いりや花見山プロジェクト」。同年8月に地域住民向けのキックオフが行われた

花見山の整備はボランティアさんのサポートあってこそ

整備にあたって、まずは放置されていた端材を片付ける必要がありました。「企業からのボランティアさんや、南三陸応縁団の“おでって”のみなさんに助けてもらって、きれいにすることができました。私ひとりでは到底できなかったことなので、ボランティアのみなさんには心から感謝しています」と勝善さん。

花見山の斜面で青い作業服を着たボランティアの方々が、苗木を運んだり斜面を整備している様子の写真

花見山の整備はボランティアの人々のサポートがあってこそ。2015年度は517人、2016年度は402人がボランティアにやって来た

手前に田んぼが広がる奥に見えている整備された花見山全景を写した写真

「正直、こんなにきれいになるとは思わなかった」と勝善さんも驚いたほど、きれいに整えられた花見山

最近では、近所の幼稚園の子どもたちがお花見に来たり、地域の人々が集まってきたりするようになりました。初めて登ったというおじいちゃんも。「近所の人たちからの『すごく変わったね』『よくなったね』という声が、やりがいになっています」と、勝善さんは笑顔に。花見山が地域の人々にとって憩いの場となることを願っています。

女の子とお母さんが花見山の斜面でピンク色の花が咲いている木を植樹している写真

2017年4.月に行われた植樹イベントで、桜の植樹をする親子

地域の人たちに愛され、人々が集う、入谷の名所に

花見山の花は、季節ごとに順番に咲くよう計画的に植えられています。秋は紅葉し、四季折々の変化が楽しめます。「これからバラのトンネルをつくる予定です。何を植えるか、アイデアは尽きませんね」と勝善さん。「年々花が増えていくので、季節ごとだけでなく、花見山の様子は年ごとに変わっていきますよ」と話します。

「『おらほのまちづくり支援事業補助金』は、下刈りの人件費や苗木・肥料の購入に充てています。花見山プロジェクトが加速したのは、補助金のおかげ。補助金の財源はふるさと納税ですので、全国のみなさんから支援をいただいているわけです。花見山が、多くの人に愛され、地域の人たちが継続的に集まれる場所になるよう、みなさんと協力してプロジェクトを進めていきます」。

勝善さんや地域の人たちの想いが込められた花見山プロジェクト。花見山が、これからどんな花で彩られ、どのような姿になっていくのか、楽しみです。

花見山の斜面には赤や白の花を咲かせた若い木々が整然と植えられており、その向こうに田畑が広がり、ビニールハウスや農作業中のトラクター、さらにその奥には家々が立ち並ぶ集落と山並みが見える花見山からの風景を写した写真

花見山から望む入谷の田園風景。花見山が入谷のシンボル・名所となる日も近いかもしれない

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