壁には絵が貼られ、たくさんの道具や材料が並んでいる工房の中で、黒いかごバッグを作成中の佐藤さんがカメラをみつめている写真

今回取材のお相手は、南三陸町志津川平磯にお住まいの佐藤功さんです。昭和9年10月生まれ満83歳。ご自宅の裏に倉庫兼作業部屋つまりは工房を建て、いわゆる晴耕雨読の暮らしの中でモノづくりを楽しんでいらっしゃいます。

竹細工でコミュニティが生まれるきっかけに

写真のようなクラフトバッグをどこかで目にしたことはありませんか?

近年、このようにクラフトテープを使った、バッグ・小物入れ作りを趣味にしている方が増えていますが、実は佐藤さんは独自の編み方を生み出し、たくさんの方に教えている先生でもあります。

「最近ね、こんなのを作ってみたんだ」と最新作を出してきてくれました。

白っぽい素材でできた、丸みを帯びた形状で持ち手が付いた籠に乗せた、取っ手付きの蓋を手で持ち上げている写真

「いつも作っている籠に蓋をつけてみたらどうだろうかと思ってさ。」

確かに、ティッシュボックスや弁当箱として蓋つきの小物入れ等はいくつも見ていますが、このような構造の籠は初めてです。他にも模様や色使いに工夫がなされているオリジナル作品が工房に置かれています。

「でも、結構失敗したりするんだよね。」

笑顔に日々挑戦する姿勢が垣間見られました。

社団法人志津川町シルバー人材センターが設立されてすぐ、地区の仲間から勧められて会員になった功さんは、得意の土木関連や除草作業などの仕事を積極的に請けてくれる頼もしい存在でした。そして、会員による友の会活動でもスゴ技を発揮し、仲間から慕われるようになります。

ただ、この竹細工サークル活動では、材料の確保や手間(竹を採って乾かして細く削って…)という課題が多く、さらには「私も手軽にやってみたい!」という女性会員からのリクエストもあり、「竹はひとまず休んで、(荷造り用の)PPバンドでこさえてみるか?!」と方針転換します。

それが功を奏して、多くの会員がサークルに参加するようになりました。

青いビニールシートの上で、材料の竹や、ナイフ、鉋などの道具を囲み、緑色の帽子をかぶった高齢の男性たちが輪になって竹を細かく裂く作業をしている写真

シルバー人材センター・竹細工サークル活動

特設ブースで青い法被を着た人々が並べられた色とりどりの竹かごを販売しており、購入した女性客に手渡ししている様子の写真

産業まつり会場特設ブースにて作品販売

シルバー人材センターが解散した後も、入谷のさんさん館や晴谷驛で講座を設け、多くの住民に独自の技を惜しげもなく伝授しています。

屋外の木製の箱に風車が飾られており、中には数種類の竹かごなどが並んでいる写真

竹籠製作のきっかけは子ども時代にあり。

部屋の一角に、見事な竹製の背負子(しょいこ)が吊るされていました。じっくり手に取ってみると、軽くて丈夫で、素人目でもこれは使いやすいだろうなと感じられる作品です。

かごの上部には緑色の紐と柔らかそうな肩紐が取り付けられている、緑がかった竹で編まれた背負子を手に持っている写真

「魚籠(びく)・瓢(ふくべ)などの出来も素晴らしいですが、そもそも竹細工を始めたきっかけは何ですか?」と伺ってみました。

「オレの母親の実家が、荒砥小学校の近くにあったんだけど、養蚕やっててね。忙しいときは子どもたちも駆り出されて、桑の葉採りや世話を泊まり込んで手伝っていたんだ。蚕を育てる竹製の【かごわらだ】に興味があって、かご屋さんから編み方教えられた。んでも、本格的に魚籠や籠を作り始めたのは社会人になってからだな。」と海を眺めながら話して下さいました。

若いころは都会に出稼ぎしていたそうで、「厚木(神奈川県)で東海道新幹線の工事にも関わったり、とにかく働けばなんぼでも稼げる時代だった。江戸川(東京都)では他の人が断るようなキツイ仕事を請けたら給料3倍もらってさ、宿舎で最初にテレビを買ったのがオレたちなんだ。」と、昭和の高度経済成長期を駆け抜けた当時を懐かしむように語る功さん。

定年後、こちら(平磯)に戻ってからは、山菜や磯モノを採ったり畑作業したり…その合間に竹細工も楽しむようになったそうです。

「浜じい」というブランド名で展開中!

日々創意工夫を重ね、竹、PPバンド、クラフトテープとそれぞれの材料を駆使した、まさに年季の入った《いぶし銀の技》を持つ功さんのオリジナル作品には、『浜じい』というブランド・タグが付けられています。

店先に置かれた「南三陸 浜じぃのKago」と書かれた手書きの案内板が掲げられている台に、複数の手作りの竹かごが並べられている写真

その独特の逸品を手にしてみたいと思う方は、さんさん商店街内「おしゃれ空間Lips(リップス)」にお出かけください。所狭しと展示&販売しています。

一方、このような籠や小物入れを作ってみたい・教えられたいという方は、入谷晴谷驛で定期的に開催中の講座を一度のぞいてみてはいかがでしょうか?

壁に絵や道具、材料などが並んでいる工房の作業台に立った佐藤さんが黒い竹かごを手作業で編んでいる様子の写真

この記事に関するお問い合わせ先

企画課 企画情報係
〒986-0725 宮城県本吉郡南三陸町志津川字沼田101番地
電話:0226-46-1371
ファックス:0226-46-5348
本ページに関するお問い合わせ