木々に囲まれ、山道の入口に木製の案内板が立っており、「神籠空山登山口」「標高461メートル」と書かれた手書きの木の矢印看板が斜めに取り付けられている写真

入谷を歩きながら民話を紹介する本連載。今回はみちのく潮風トレイルのコース上でもある入谷最高峰の神行堂山やその近辺の集落の地名に隠された歴史についてお伝えします。

神行堂山トレッキングコース

前回は坂の貝峠に達したところまで紹介しました。神行堂山のてっぺんまでの登山道は、坂の貝峠展望台からのルートの他、石の平集落にもありました。登山口は巨石の手前です。

入谷を象徴する最高峰461メートルの神行堂山。石の平から登るコースには、写真のような案内板が建っています。「石の平歩け歩けの会」という団体が設置したようですが、時期は不明です。

程よく差し込む太陽の光が織り成す自然のカーテンのトンネル。足元には山ツツジの花などの植物、自然に包まれての尾根下り…ニホンカモシカやテンにも会える林道を下りる。体力づくりに郊外授業にも里山にエネルギーをもらう癒しの空間をどうぞ(一部省略)

と書かれており、子どもたちの遠足やハイキング等にも最適な道だとアピールしています。さらに、「ここはイヌワシの生活圏となっていて、山頂付近では時折無敵な姿を現し、ゆうゆうと旋回している姿を見ることができます」とも記されています。

かつては斜面が牧草地だったのでイヌワシの営巣も確認できましたが、杉や雑木が成長して餌を捕ることが難しくなったのか、近年、神行堂山ではその雄姿を観ることはないと言われています。

山道の入口に木製の案内板が立っており、「神籠空山登山口」「標高461メートル」と書かれた手書きの木の矢印看板や「石の平歩け歩けの会」の団体が設置した看板の写真

ちょぺっと寄り道…花の辻

トレッキングコースから巨石方向に進み、南に折れると、辻(つじ=十字路)がありました。この地点から見て左(東)は水仙ロードに戻る道。直進すると民家があるのですが、右(西)の道は残谷集落へと続きます。

奥には山並みが広がり、周囲に家屋や畑がありカーブの道路の途中に青いポストのある写真

この角に小さな花壇がありました。近づいてみましょう。

*ちなみに、青いポストのようなものが建てられていますが、新聞受けです。この地域では、玄関先まで届けてもらうのは申し訳ないと、このように街道筋に設置している家庭が少なくありません。配達してくれる新聞屋さんや郵便局員への気遣いが感じられます。

民家の前の道沿いに、花が植えられた花壇があり、案内看板の金属板と白い杭が立っている写真

こちらの案内看板には

自然の美しさと、笑顔に出会う道 みちのく潮風トレイル 環境省と町の計らいで神行堂山懐に住む私達石の平部落に標識が設置されましたことを記念し、心のより所と花壇を造りました。花壇設置、管理、元気なさと山つくり研究会。

と書かれていました。(原文のまま)

みちのく潮風トレイルという文言がありましたので、大昔の民話ではありませんね。四季折々にきれいな花が咲いているはずなので、皆さんもぜひ立ち寄ってみて下さい。

大昔、ここにも津波が?!

石の平・花の辻を右折します。緩やかな峠道を越えると数軒の民家がありました。ちょうどご主人が畑から帰宅したようなので、お話を伺いました。

「ここはね、神行堂山の麓ではあるけど結構標高高いよね。私の家の屋号は『よらさ』と言うんだ。その意味はね、『寄る波』つまり昔のずっとむかしこの辺りにも大津波が襲ってきた…かも知れないって言う話も聞いてはいるんだけど、たぶん違うね」にこやかに当主阿部勝善さんは教えてくれました。

「実は、我が家の裏に小さな川があったんだ。そのことを寄る波って言っていたのかも。その頃は水が貴重だったから、それが屋号になったのかもしれないね」

農村の家の前で麦わら帽子をかぶった男性が笑顔を見せている写真

津波で残った谷?!

緩やかなカーブを描いた坂道と広々とした田園風景の写真

阿部勝善さんのお宅(よらさ)から西に向かうと、だらだらと下る坂がみえます。

「その辺りは残谷(のこりや)と呼ばれている。確かに地形は小さな渓谷だね。これもまた大昔の津波で残った谷なんて言われているようだけどね」

降りきった地点には小さな川が流れていました。八幡川の源流(たらば川)で、上流には天然ワサビが育っているとの話も聞きました。下流の分岐点を西に折れると「弥惣峠」にたどり着くはずなのですが、案内板の文字はかすれて見えない状態になっています。その峠道を越えると東和町米川という集落に行き着くそうです。

小さな側溝や水路があり、古びた看板と錆びた金属製の矢印看板が立っている写真
錆びついた矢印型の看板が立っている写真

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