「コミュニティ・カーシェアリング」を利用した山内さん夫婦が車から降りて来る様子の写真

高齢者の交通は南三陸のみならず全国的に大きな課題となっています。そんななか入谷地区の山の神平集落では住民らによって「コミュニティ・カーシェアリング」の活動がスタートしました。交通の課題解決とコミュニティづくりに期待がかかります。

山間部で始まった新たな移動支援

南三陸町入谷地区の山里、少子高齢化が顕著な地域。子や孫の世代は町を離れ、高齢者たちが先祖伝来の土地に残り生活している傾向も増えています。

巨石やなまこ石がある神行堂山の中腹、日本の原風景とも称される「山の神平集落」は最寄りのバス停から約1.5キロメートルも離れており、しかも急な坂道が続く典型的な中山間地。自然環境は抜群だと訪れる人々は気持ち良さそうに深呼吸をするが、毎日を過ごす住民は大きくため息をつきます。2019年秋、山の神平集落を含む入谷林際地域では、住民が声をあげ新たな取り組みに乗り出しました。

黄金色の稲穂が揺れる畑と集落の家々が山あいに寄り添う、入谷地区ののどかな里山風景の写真

コミュニティ・カーシェアリング

老いて車の運転が困難になると、バスの停留所には距離があるうえ、バスの本数も限られてしまう現状があります。そうなると当然出かける手段が少なくなってしまう。そんな地域と高齢者の課題を、同じ地域で暮らす住民たちはかなり以前から抱いていたといいます。

とあるきっかけによって石巻市でコミュニティ・カーシェアリングの活動を行う「一般社団法人日本カーシェアリング協会」を紹介された林際地区では、同団体から指導と協力を得て、実証実験を経て住民18人が登録する組織「林際カーシェア会」が発足しました。

会員登録した住民は、旧林際小学校(現・校舎の宿さんさん館)に置かれた5人乗りの乗用車1台を運転することができるし、ボランティア運転手に頼んで外出支援もできるようになりました。

旧林際小学校の校舎の前にシルバーの5人乗りの乗用車1台が置かれた写真

正式にスタートした取り組みは、入会金や年会費等は不要だが1キロメートル走行ごとに100円程度を会に預け利用できるそうで、燃料代や経費を除いた分は返金されるという。シェアする車両は協会から無償貸与されており、自賠責保険も掛けられています。

自分で運転できない方は、事前予約により運転手を頼むことができる。比較的若い住民三人の協力会員が交互に運転(移動支援)を担うが、都合の良い時間帯が限られるため定時ダイヤを組むことはできていません。

それでも、通院や買い物に出かけたくても運転できない、バス停までも歩けないといった山間部の高齢者にとっては、とてもありがたいと好評です。

会長の山内太一さん(88歳)は「最近までバイクでバス停まで行くこともできたが、膝を悪くしてからは控えた。自宅と病院を往復送迎してくれるし、運転手も知り合いなので安心だよ」と笑顔で話します。

車を降り病院へ向かう山内さん夫婦の写真

「診察と薬局が終わったら連絡すんのっしゃ。バスの時間気にしなくて良いから助かる」(奥様談)

(注意)料金を決めて、ドライバーが運送の対価を受け取ると道路運送法に違反している白タク行為とみなされます。その点を踏まえ東北運輸局と協議を行った結果『コミュニティ・カーシェアリング』では、かかった経費実費を利用頻度に応じて平等に分担する互助の仕組みで行っています。(精算時に最終的な負担額が決まります)日々の運営のために『預り金』のルールを決めて、利用の都度積み立てを行い、定期的に精算しています。また、ドライバーはボランティア(無報酬)で活動していただきます。
(一般社団法人日本カーシェアリング協会 ホームページより引用)

週に一度の「買い物ツアー」で仲間づくり

通院は、診療科や予約時間など異なるのでそれぞれが事前予約するが、大型スーパーでの買い物を何人かのグループで行けないかと会員たちが考え、毎週水曜日「買い物ツアー」を企画しています。

4人程度が乗り合うため、利用料金が按分されます。気の置けない仲間とおしゃべりしながら食材や日用品を買い、しかも自宅まで送迎。「なによりもお友達とみんなで行く買い物が楽しい。これからもずっと続けてほしい」と利用者は嬉しそうです。

地域、とくに入谷のような中山間地では「交通」の課題が重くのしかかってきます。今回の「コミュニティ・カーシェアリング」の取り組みはそんな課題解決の一助となることが期待されています。交通の課題解決とコミュニティの構築。多くの地域で向き合わなければならない課題だからこそ、ここで始まった取り組みがどのような成果をみせるのか注目していきたいと思います。

広々とした駐車場がある大型スーパーの外観を写した写真

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