壁一面に展示されたカラフルでユニークなアート作品の前で、笑顔で写っている前川さんの写真

12月9日(土曜日)にデザイン講座「デザイン×福祉」が開催されました。ワークショップのほかにNOZOMI PAPER Factoryをブランディングしたユニット「HUMORABO(ユーモラボ)」のお二人がこれまでの取り組みや「デザイン×福祉」の可能性について話をしました。

はがき作りを体験するワークショップ

南三陸復興ダコの会が主催する「ハンドメイド de 副業プロジェクト」とデザインユニット「HUMORABO」のコラボレーション企画として、12月9日(土曜日)にデザイン講座「デザイン×福祉」が開催されました。

また「OPEN! Factory 2017 WINTER」と題し、のぞみ福祉作業所を一般開放したワークショップも行われ、20名ほどの参加者と、のぞみ福祉作業所のメンバー20名の計40名近くが集まり、盛り上がりを見せていました。

福祉施設の作業所自体、町内であってもなかなか訪れる機会がないもの。ふだんとは違った作業所の雰囲気に、メンバーも喜びを感じ、ワークショップにも熱が入っているようでした。

ワークショップでは、牛乳パック剥がしから、紙すき、そして仕上げのレタープレスなど一連の作業を体験。ひとつひとつ手作業でていねいに作られている様子を実感していました。

男性と青い手袋をした女性が協力して、木枠を使って丁寧に和紙を漉いている様子を写した、和紙づくりの作業風景の写真

紙ができるまでの物語こそが価値

2015年春、障がい者の生活介護事業所である「のぞみ福祉作業所」が「NOZOMI PAPER Factory」としての活動を開始。手すきのレタープレスはがきなど、思わず手に取ってしまう、かわいらしくデザイン性に富んだ商品やブランディングを担っているのが前川雄一さんと前川あきこさんの夫婦によるユニット「HUMORABO」です。前川さん夫婦は、それぞれ福祉施設との協働を行っていたそうですが、2012年にのぞみ福祉作業所の商品開発に携わることになりました。

「社会福祉法人洗心会 のぞみ福祉作業所」と書かれた木の看板と、「OPEN! Factory」と書かれた黒板の案内板が立ち、工房の入り口へと続く木製スロープがある風景の写真

「当時『福祉施設で作られた紙製品は売れないよ』と言われている状況がありました。そんななか、のぞみ福祉作業所で作られる、牛乳パックの再生紙でできた紙をどのように売ることができるのか?を考えていた」と前川さんは話します。そこで出てきた答えが「NOZOMI PAPERという新しい価値を作る」ということ。

「紙ができるまでの過程にすごい物語があって、それこそが価値なのではないか。そこに人の温かみや大事な要素が隠されているのではないか」と前川さんは話します。

会議室のような場所で、ノートパソコンの前で真剣な表情で話す前川雄一さんと、その横に座る前川あきこさんが写っている写真

前川雄一さん(左)と前川あきこさん(右)

「福祉の当たり前」に社会課題解決のヒントがある

原料となるのは、地域や全国からいただく紙パック。支援でいただいた立派な道具と、解体、手漉き、ステンシルなどの手間のかかる手仕事、イキイキと働く利用者さんの姿、そして各人の適正を見極めた仕事や環境づくり――。それらがすべてあって初めてNOZOMI PAPERが生まれるのです。決して一人の人間や、ひとつの企業だけでは完成しない。多くの人との関わりのなかで生み出された商品の物語。

「福祉の世界では当たり前のことの中に、『環境問題』『働く意味』『多様性』など社会課題解決のヒントが隠されているのではないか、と考えたのです」

こうして生まれたNOZOMI PAPERは、ただのリサイクルペーパーではありません。東日本大震災という未曾有の大震災を経験し、大きな被害を受けたのぞみ福祉作業所。しかし、震災をきっかけに育まれた全国との絆。いただいた支援と、それを受け止め前に進み続けたのぞみ福祉作業所のスタッフ、メンバー。多くの人の想いがギュッと詰まったのがNOZOMI PAPERです。

手漉き和紙に「ARIGATO」「YES」「LOVE」「OMEDETO」などの言葉を優しい色合いでデザインされたメッセージカードが並べられている写真

メンバー自身が書いた文字をデザインしたメッセージカード

「福祉×デザイン」の可能性

個性豊かなメンバーが、無理なく、楽しく、自分らしく生きていける場。それがNOZOMI PAPER Factoryです。

「個性豊かな人が集まってアートが生まれ、物を作る場所であり、交流が生まれる場所がファクトリー。のぞみ福祉作業所もそういう場所になったらいいなという想いで生まれた」と話す前川さん。今回ワークショップのような工房の一般開放も、地域に開かれた工房としてのチャレンジとなります。

そんなNOZOMI PAPER Factoryのアートを気軽に触れることができる場があります。「南三陸さんさん商店街」の「NEWS STAND SATAKE」にて『POP!UP! NOZOMI PAPER Factory 初個展! NPF_Kazukoの招き猫展「福まねき、あの手この手」』が12月25日(月曜日)まで開催されています。展示されているのは、のぞみ福祉作業所のメンバーの一人であるKazukoさんが描くユーモラスでカラフルなキャラクター。おいしいコーヒーを楽しみながらホッとひと息つける空間になっています。

鮮やかな色彩で動物の顔が描かれ作品が壁に3枚並べて飾られており、その下にはかわいらしい模様の陶器のマグカップが並んでいるギャラリースペースの写真

Kazukoさんがイラストを描きはじめたのは、震災後だといいます。「それまでは私が絵なんて描けるとは思っていなかった。今では絵を描くことが楽しいし、熱中していやっている。こうやっていろいろな人に見てもらえるのはうれしい」と少し恥ずかしそうにしながらも今回の個展開催への喜びを語ってくれたKazukoさん。

カラフルな猫の作品が壁に展示されている前で写っている前川さんの写真

「福祉の現場ではケアが優先され、変化の少ない安定が求められる。しかしNOZOMI PAPER Factoryとしてのものづくりへの挑戦は、福祉の現場だけでなく、社会にも刺激をあたえることになる」と前川さんは話します。

「福祉×デザインは、人々(みんな)が幸せでいられることを計画すること」と話す前川さん。NOZOMI PAPER Factoryですすめられる「福祉×デザイン」というチャレンジから私たちが学ぶことは多いのかもしれません。

ノートパソコンの前で真剣な表情で話す前川雄一さんの写真

インフォメーション

POP!UP!NOZOMI PAPER FACTORY
初個展!NPF_kazukoの招き猫展
「福まねき、あの手この手」

  • 開催期間:12月8日(金曜日)~12月25日(月曜日)
  • 展示時間:9時~18時
  • 場所:NEWS STAND SATAKE内(南三陸志津川さんさん商店街内)
2017年冬に宮城県南三陸町ののぞみ福祉作業所で開催されたNOZOMI PAPER Factoryの紙すきとレタープレスのワークショップを告知する案内チラシ
みんなのきりこ紙漉きとレタープレスワークショップ、南三陸復興ダゴの会のハンドメイド副業プロジェクトとデザイン講座、NOZOMI PAPER Factoryの初個展「福まねき、あの手この手」の同時開催イベント情報の案内チラシ

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