白い壁に黒い器の絵が飾られている横に、青いシャツを着た谷村さんが立っている写真

2019年5月18日~6月1日開催の「谷村明門展」に行ってきました。谷村明門さんは南三陸町出身の版画家。ふるさとである南三陸の心象風景をモチーフとした作品を拝見し、南三陸への想いを伺いました。

心象風景を表現

東京・国立市の閑静な住宅街にある画廊「荘」。谷村さんはここで20年以上個展を開いています。訪れると、オーナーと一緒に笑顔で迎えてくれました。どんな版画作品が並んでいるのでしょうか…。

木々とレンガに囲まれた『gallery荘』と書かれた画廊の入口があり、扉が開いて中に作品が展示されている写真

自然光があふれる画廊「荘」。1982年にオープンし、年に8~9回、企画展を開催している

目に飛び込んで来たのはモノクロの抽象的な作品たち。想像していたものとは違い、少し驚きましたが、なんだか訴えかけてくるものがあります。眺めているとその世界観に引き込まれるような…。

作品のほとんどは植物などの自然を題材としたもの。一見おどろおどろしいのですが、よくよく鑑賞すると、決して不気味ではなく、不思議な質量・空気感が漂っています。

様々な質感や形が表現されている白と黒の抽象的な版画作品が4点、壁に展示されている画廊内の写真

ウォータレスリトグラフやドローイングなど、約30点が展示されていた

谷村さんに、創作のインスピレーションについて聞いてみました。「主にモチーフとするのは自然、すなわち生命体ですね。私の創作は、テーマありきではなく、湧いてきた心象風景を表現するというものです。カラーの作品も手がけないわけではありませんが、しっくりくるのはモノクロですね」と谷村さんは話します。

創作の原点にあるのは、ふるさと・南三陸の海や森

谷村さんは旧志津川町で生まれ、10歳まで住んでいました。その後 石巻に引っ越し、大学卒業後からはずっと東京です。「南三陸で過ごした時間は長くなかったのですが、やはり故郷といえば南三陸です。私の作品の原点には、幼い頃に見ていた南三陸の海や森の風景がありますね」と谷村さん。海や森などの自然が身近にあった環境で生まれ育ったことが、谷村さんの創作に大いに影響を及ぼしているようです。

テーブルの上や壁に複数の額入り作品が飾られている室内で、椅子に座って話している青いシャツを着た谷村さんの写真

谷村さんは福島大学教育学部で美術を学んだあと、創形美術学校研究科を修了。日本版画協会、プリントザウルス国際版画交流協会の会員としても活動している

「子どもの頃の私にとって、南三陸の海は青くてきれいなイメージではありませんでした。嵐の前の海など、どんよりしたものなんです。森にしても、たとえば入谷の森は、薄暗くて気味が悪い存在でした」と谷村さんは振り返ります。その心象風景を表現した谷村さんの作品からは、大いなる自然に対する畏怖・畏敬の念が伝わってきます。

右下に作品名が記載された小さなラベルものが添えられ、木々が密集し、幹や葉が複雑な模様を作り出していて白黒で描かれた森の風景の版画作品が展示されている写真

「イリヤの林」というタイトルの作品。子どもの頃の入谷の印象が忘れられないという

左側の本は青みがかった山や木々の風景写真が表紙に使われ、「南三陸入谷の伝承 山内郁翁のむかしかたり」と書かれており、右側の本は考古学的な発掘現場と遺物の写真が表紙に使われ、「南三陸の山城と石塔」と書かれている写真

ギャラリーには南三陸にまつわる書籍・資料なども置いてあった。「来場される方が少しでも南三陸に興味を持ってくれたらうれしいです」と谷村さん

紙の上に鉛筆で描かれた一本の大きな木の絵があり、その隣には鉛筆と、版画制作に使われる木製の持ち手がついたインクローラーが右側に置かれている写真

谷村さんは、平版にドローイングしたものをそのまま印刷する「ウォーターレスリトグラフ」という技法を用いる。個展では、実際に使用したアルミ版、インクローラー、水溶性色鉛筆なども展示

別の仕事をしながら版画家として活動する谷村さん。「これからもコツコツと作品を作り、個展のような場で発表することで自分の世界観を伝えていきたい。そして、それに共感してくださる方が少しずつでも増えるとうれしいです」と話します。

「いつか南三陸でも作品を披露したいですね。今の現実の風景とは大きく違うと思いますが、自分の中の南三陸を見てもらいたいと思っています」

南三陸での谷村さんの個展、ぜひ実現してほしいですね!

白い壁に展示された3点の抽象的な白黒の作品の前に、青いシャツと灰色のズボンを着た谷村さんが立っている写真

入谷の森をモチーフにした作品の前で

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