子どもたちが伝統的な色とりどりの和装を着て、大人たちと一緒に並んだ記念写真

25人の稚児が参加した今年の稚児行列

子ども達が煌びやかなお飾りと着物を纏い、神様やお神輿と一緒に町内を練り歩く「稚児行列」近年は新型コロナウイルスの影響により境内でのご祈祷のみとなっていましたが、今年は4年ぶりに以前の形に戻りました。お神輿を担ぎながら子ども達の様子を取材しました。

南三陸の稚児行列とは

”稚児行列”とは日本各地で行われている伝統行事の1種で、稚児(乳児・幼児の意味)が綺麗なお化粧や着物を身に纏って町内を歩き、無病息災をお祈りするものとされています。

森の中の神社の前に子どもたちも伝統的な衣装で並び、大勢の人々が集まっている写真

着替えの後は子ども達も神事に参加

南三陸町の稚児行列では来年度から小学生になる子ども達を対象にしており、今年は9月17日(日曜日)に5〜6歳の子ども達25名が参加しました。

お神輿と稚児たちの準備

会場である上山八幡宮に集まった子ども達は着物に着替え、飾りを付け、お化粧をしてもらいます。着付けには南三陸五社之氏子青年会メンバーの他に、震災当時からボランティア活動で来町しているフェローズ・ウィルのメンバーの方々にもお手伝いいただきました。

伝統衣装を着た女の子2人が並び、手前の大人が子どもの鼻筋に白い粉を塗っている様子の写真

お化粧をしてもらって準備ばっちり!

それと同時並行で、男手でお神輿を倉庫から出し、台車と合わせます。

伝統的な神輿を青い法被を着た男性4人が囲み、準備をしている様子の写真

持ち上げるのも一苦労なお神輿を慎重に運びます

その後、お神輿に神様を祀る神事を行い、こちらも準備万端となりました。

神職の男性が前に立ち、青い法被を着た数名の男性が深くお辞儀をしている、屋外での祭礼の写真

神様をお神輿にお呼びします

天狗の鼻はなぜ長い?

南三陸町の稚児行列には”天狗様”がいらっしゃいます。列の前方を歩き、その赤い顔はまだ幼い子ども達から泣き喚かれることもしばしば。

赤い髪と面をつけた伝統的な天狗の装束の男性が旗を持ち、木陰の下に立っている写真

暑さ対策も万全になった天狗様。立っているだけで威圧感があります。

そんな天狗様の鼻はなぜ長いのか、そもそもなぜ稚児行列に参加しているのか、疑問に思った私は禰宜の工藤真弓さんにその意味についてお聞きしました。

青い法被を着た後藤黎亜さんとピンクの衣装を着た工藤真弓さんの写真

上山八幡宮の禰宜である工藤真弓さん(右)と、南三陸五社之氏子青年会の後藤黎亜さん(左)

上に降り立ったまだ幼い神様を導いたとされる神様です。その長い鼻で行き先を示し、導き、赤い顔は危険を知らせるための色とされています。稚児は神様のお遣いと言われているので、天狗様が前を歩き道を示し、危険な場所を知らせる大事な役目を持っています」

この長い鼻にも天狗様がいることにもちゃんとした意味がありました。畏怖の意味ではなく、子ども達を守る神様として参加されていたのですね。天照大神の孫である瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が地上に降り立った時の神話(天孫降臨)があり、その中に出てくる瓊瓊杵尊を導いた神様(猿田彦神)が天狗というわけです。

境内〜震災復興祈念公園へ

神事が終わり、いよいよ稚児行列が始まりました。今回は上山八幡宮からさんさん商店街を通り、南三陸町震災復興祈念公園までのコースとなります。横断歩道が目の前に出来たので、以前よりも遥かにスムーズに渡れるようになりました。

中央には赤い面をつけた人がおり、青い法被を着た大人たちが旗を持ち、一列に並んで歩いている写真

お旗持ちや塩を撒く役が先頭を務めます。

数人の大人が赤と白の布で飾られた神輿を担いでいる後ろに、色とりどりの衣装を着た子どもたちが並んでいる写真

お神輿の後ろに稚児が続きます。

背景にはテントが並び、子どもたちが伝統的な和服を着て、大人と手をつなぎながら歩いている様子の写真

保護者と手を繋ぎながら歩きます。

稚児達が南三陸311メモリアル前を通る際、保護者の皆様以外にも観光で訪れていた方々から拍手や「かわいいね〜」など、たくさん声を掛けられていました。なかなか見ることのない行事に「これはなんのお祭りかしら?」と行列に付き添うスタッフに質問をする方も。年に一度の行事を偶然見れたこと、子ども達のお祭りだということを伝えると、一緒に安全祈願をしていただきました。

子どもたちが伝統的な衣装を身にまとい、大人と手をつないで行列を作って歩いている様子の写真

たくさんの人に見られると少し照れてしまいますね

法被を着た男性を先頭に、子どもたちが伝統的な衣装を身にまとい、大人と手をつないで行列を作って歩いている様子の写真

中橋を渡る際は、お神輿は橋の入り口でお留守番となりました

さんさん商店街〜境内へ

復路ではさんさん商店街の中に入り、少しだけ水分補給をしてから境内へ戻りました。

子どもたちが伝統的な和装を身にまとい、大人たちと一緒に屋外を歩いている様子の写真

観光客の皆さんもお神輿の掛け声に合わせてくれました

華やかな冠をかぶった女の子たちが笑顔で歩き、赤い仮面をつけた大人や見物客で賑わっている写真

休憩中の天狗様とじゃんけんをして遊ぶ女の子たち

お神輿の掛け声に合わせて、フードコートで料理を待つ観光客の方々も「わっしょい!わっしょい!」と一緒にこの稚児行列を盛り上げてくださいました。神社や地元の方だけでなく、この町に訪れる方々の温かさにも触れられたお祭りとなりました。

来年からこの子ども達は小学1年生。安心安全に楽しい学校生活を送れますようにと祈りを込めて。

石造りの鳥居の奥に、緑豊かな木々と参道の階段が続く神社の写真

子ども達に優しい町でありますように

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