スーツを着た外国人男性と日本人男性が赤いリボンを胸につけて笑顔で賞状を持ち、握手を交わしながら壇上に立っている写真

環境に配慮した養殖場としての認証、ASC国際認証。日本で初めて宮城県漁業共同組合志津川支所出張所戸倉かき生産部会が取得し、認証取得伝達式が5月18日に南三陸ホテル観洋で執り行われました。

ASC認証の社会的意義

ASC認証は、国際機関であるASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)により、自然や資源保護に配慮しつつ、安全で持続可能な養殖事業を営んでいることを認める国際認証制度です。

世界人口が増大する現代に、養殖は安定食料供給のために重要な役割を担いますが、同時に自然環境の破壊、生態系のかく乱、薬物の過剰投与などの問題も浮かび上がってきています。そういった課題を人々の意識に留め、解決していくための一つの手段として、ASC認証は徐々に世界で広がりつつあります。

日本国内でASC認証を取得するのは、南三陸町が初めてです。

世界に誇れる「戸倉っこかき」

南三陸町戸倉波伝谷地区にある戸倉漁業組合の仮設テントで開催された、牡蠣の試食会では、熱を加えてもプリプリ、ふっくら、大きくて、ジューシー食べきれないくらいの牡蠣をいただき、参加者は皆、大満足の様子でした。

天井の高い大きなテントの中で、スーツ姿の多くの男性がテーブルについておにぎりやカキフライを食べながら談笑し、奥ではエプロン姿の女性たちが配膳や準備をしている写真

牡蠣の試食会場

きつね色のカキフライがたくさん並んでいる写真

プリプリのカキフライ。かきがよいのか?お母さんたちが上手いのか?とにかくおいしい。

大きなテントの中で、たくさんのエプロン姿の女性たちが鍋の前に集まり笑顔でカメラを見ている写真

漁協婦人部の皆さんの晴れやかな顔からは、自分たちがつくってきた牡蠣を誇りに思う気持ちが伝わってきました。

震災後の新たな挑戦として国際認証取得へ

戸倉かき生産部会は、養殖たなの数を震災前の3分の1に減らすことで、牡蠣ひとつひとつに多くの養分をいき渡らせ、従来のやり方では出荷まで2〜3年かかる生育を、1年で出荷できる大きさまで育てることに成功しました。この生産方法を実現するには、戸倉かき生産部会に参加する37の養殖業者の協力と団結がなければ実現できません。

今まで踏み入れたことのないやり方に戸惑いや不安をかかえながらも、20年後の安定生産を目指して、新体制をすすめることになったそうです。

しかし、世界的な認証を取得し、順風満帆なスタートを切っているように見えますが、生産者はいまだ不安を拭いきれていません。国際的な認知度は高いものの、国内ではまだまだ認知度が低く、収入に結びつくには時間が掛かるとのことです。困難のなか、生産部会一丸となって新たな挑戦を続ける産地にこれからも目が離せません。

環境への目線

南三陸町では、昨年の秋に取得した森林の環境を守る林業を認証するFSC認証に続き、今回、ASC認証を取得しました。

一つの自治体でFSC、ASCを取得している自治体は今まで、世界でも例がなかったとのこと。分水嶺に囲まれ、海、山、里が密接に関わる地形を持つ南三陸町だからこそなし得たものかもしれません。

佐藤町長からの祝辞の中で、「海に打撃を受けたけれど、豊穣の海が残った。”ピンチ”を”チャンス”に変えるこの取組みを支えてゆきたい」というお話がありました。

大災害を経験した三陸沿岸は、自然の脅威と恵を、繰り返し体験、享受してきた長い歴史があります。

昨今、世界人口の偏り、資源の問題、放射能汚染、公害など、グローバル化する世界情勢の中で、持続可能な社会づくりは課題としてあげられています。

東日本大震災を経て、自然と人の関係を改めて問い直す機会を与えられた三陸沿岸は、その教訓を活かして世界に発信する役割になっているのかもしれません。

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