雲が多い青空の下、田畑の奥にビニールハウスがあり、そのさらに奥に住宅と山並みが見える風景写真

2月にしては春の陽気を思わせる暖かな週末。
入谷地区のハウスから白く煙がたなびいていました。

雲が多い青空の下、田畑の奥にビニールハウスがあり、そのさらに奥に住宅と山並みが見える風景写真

13日の土曜日、南三陸町入谷の農業グループ「南三陸農工房」では昨年の12月に収穫した“当帰”(トウキ)の根の湯もみ作業を行うのだそうです。

ハウスの中で、まきがくべられた上に置かれた大きな蓋つきの寸胴鍋が置かれ、その横のストーブには蒸気をあげたヤカンが置かれている写真

ハウスの中に入っていくと、もうすでに湯沸かしの準備が始まっていました。
ところでこのトウキ。皆さんはご存知でしょうか?
生薬であるトウキの根は、血行を促進し、体を温める作用があり、貧血、冷え性、月経不順、便秘などに効果があるとされ、婦人薬として重宝されています。
(過去記事リンク)

黄緑色のギザギザした葉が茂っている写真

(トウキの葉)

トウキの白い小さな花が密集して咲いている写真

(トウキの花)

たくさんの乾燥させたトウキの長い根が整然と並べられている写真

(トウキの根)

4年前から民間会社「アミタ持続可能経済研究所」の協力のもと栽培を始めて、今回は20アールに約10,000本の苗を植えて収穫したそうです。
トウキの苗はとても小さく、定植作業にはボランティアの方たち20人の手を借りたといいます。

ビニールハウスの中で、長く並んだ数列の台の上にブルーシートなどが広げられ、その上に無数のトウキの根が並んでいる写真
ハウスの中の作業台にトウキの根が入ったオレンジ色のコンテナが複数並び、その手前に置かれた、トウキの根とお湯が入った発泡スチロールの箱から湯気が上がっている様子を、周りに集まった男性3人が観察したり、撮影したりしている様子の写真

ハウスの中には、収穫後きれいに洗って乾燥させたトウキの根が並んでいました。
そしてこの日は、この乾燥させた根を60~80℃の湯の中で柔らかくして整形するのです。
この工程が、湯もみ作業なのですね!!

湯気をあげる寸胴鍋の後ろで一人が蓋を持って立ち、横に立ったもう一人が、ゴム手袋をつけた手を鍋に入れ、温度を測っている様子の写真

湯の温度を慎重に測り、トウキを5分くらい60~80℃の湯に浸し手もみします。
湯もみ作業をすることで、トウキの根が品質の高い生薬になるのだそうです。

ハウスの中の作業台に複数の湯気をあげる発泡スチロールの箱が並べられ、青いビニール手袋をつけて湯の中のトウキを手もみしている男性たちと、その様子を撮影している人々の写真
ハウスの中の作業台に置かれた、乾燥したトウキの根が入った2つのオレンジ色のコンテナの上に、湯もみをしたトウキの根が並んだ発泡スチロールの箱のふたが置かれ、その周りで青いビニール手袋をつけた男性たちが作業をしている写真

この日参加した千葉大学環境健康フィールド科学センター、福島県立医科大学会津医療センターの先生方や、同じ地域でトウキを栽培しているのぞみ福祉作業所、地元の農業改良普及センターの方、などが全員で湯もみ作業をするという貴重な風景です。

開け放たれたハウスの入り口横にまきが積まれており、中にならんだオレンジ色の椅子に2人の男性が座り、入り口付近に男性と女性が立っている様子の写真

千葉大学の渡辺先生は「トウキの栽培は難しく、一般的に発芽させて苗を作るまで約1年かかる。発芽率も低く苗生産技術の確立に苦労した。」と話します。
苗を植えて収穫するまでさらに1年かかるので、今までおよそ2年かかったのですね。
しかし、これまでの研究成果を活かして42日間で苗を生産することに成功。
播種から収穫まで約2年かかるところを1年以内で行えるようになったそうです。
そしてなんと、「トウキは日照りに弱く、夏涼しく夜気温が下がる気候がいいので、入谷は合っている。」というのです。
南三陸農工房代表の阿部博之さんは「無農薬なので、害虫や雑草を取り除くのが大変だった。」と話します。
いいものを作るということは大変ですね!

白いテーブルの前や横に置かれたオレンジ色の椅子に座った男性たちが会話をしている様子の写真
湯気越しに写した、薄茶色のジャケットに赤と黒の配色のマフラーを首に巻いた眼鏡をかけた男性の写真

トウキは海外(主に中国)から安く手に入るといいますが、会津医療センターの漢方専門医の三潴(みつま)先生は「漢方薬の8割が中国からの輸入。それでも国産がいいのは安心安全だから。」と話されます。
そして、患者さん一人ひとりに合った処方をするため、薬局や薬店で取り扱われている既に調合された漢方薬ではなく、その元となる“生薬”が手に入るということが重要なのだそうです。先生のもとにはそのような、生薬を独自に調合した漢方薬の処方を求める患者さんも多く、忙しいのだとか。
南三陸産のトウキが、医療にも、地域にも、貢献していくかもしれない!
そんな希望を感じました。
(西城)

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