
まちづくり遂行中の南三陸。
そこにまつわる試行錯誤・紆余曲折の数々は今後多くの自治体にとって貴重なモデルケースとなりえるものですが、この経験を長く広く伝えていくためにはどうしたらよいのでしょうか。
8月某日、南三陸まなびの里 いりやどにて『みんなのまちづくりゲーム』が行われました。

『みんなのまちづくりゲーム』は現在開発中のボードゲームです。
2013年、リアルなまちづくりを疑似体験してもらおうとNPO法人キッズドアと株式会社アミタ持続可能経済研究所が原案を作り、南三陸ラーニングセンターが一般販売に向け商品化を進めています。
この日は私大ネット36のスタディツアーのプログラムの一環として関東圏の大学に通う学生さんたちをプレイヤーに迎え、ゲームを行うこととなりました。
進行は南三陸ラーニングセンター 安藤さんです。

このゲームはチーム戦形式。
一人ひとりが架空の町の住民となり、協力して町を豊かにしていきます。
1町5人、それぞれ森・里・海・街・役場の役が与えられ、更にノンプレイヤーキャラクター“都市”を加え6人でゲーム開始です。

森・里・海・街は都市からエネルギーを買い、人口やブランド力・産品売上向上のためのアクションを起こします。
アクションのたびにごみが発生するので役場はごみを処理しつつ各プレイヤーから税金・交付金を受け取ります。
その一方で定期的に一定数の定住人口が減っていきます(今の日本と一緒ですね)。
また、プレイヤーたちは議会を開催することができます。
開催すればお金と引き換えにアイデアカードを引くことができ、開催しなければお金はかからないものの更に定住人口が減ってしまいます。
最後にハプニングカードを引いて1ターン終了。
1ターンを1年とし、5ターン(5年)で1ゲームが終了。
より多くのお金が残っていたチーム(町)が勝ちです。
…説明しただけで難しさがお分かりいただけるかと。
学生さんたちも、そのシビアさに頭を抱え始めました。


「都市は(お金を)持ってくね~。」
「人口減るばっかりなんだけど…。」
「うわ、原発のごみって処理してもらえないの!?」
さらに“爆弾低気圧”や“大恐慌”などのハプニングカードにも振り回されます。
始終おたおたしつつ、新人町民たちのまちづくりはゲームセットとなりました。


さて結果発表です。
4チームの中で優勝したのは『とびだせ動物の森!』チーム。
ですが少々浮かない顔です。


「お金も残り、ブランドの結果はよかったのですが、原発に頼り過ぎた町になりました。
10年後にはおそらく破産します。正直言って私たちはこの町に住みたくないです。」
そう。このゲーム、試合に勝っても『本当に勝ち』と言えるとは限らないんです。
手元のお金は多くとも、環境や人口推移に見えない負債を抱えてしまうと未来が不安な町ができてしまったりします。
「皆さんはどこの町に住みたいですか?」
安藤さんの質問に自信たっぷりで手を挙げたのは他のチーム。
町内に循環型エネルギー施設を作ることでブランド化・人口減の抑制を実現した町民たちでした。

「まちづくりの難しさを現実として感じてもらえたら、このゲームの収穫と言えます。
世の中5年では終わりません。どうやったら持続可能な地域、持続可能な国になっていくか。
私たちはそれをいつも考えています。」(南三陸町企画課 地方創生・官民連携推進室 太齋さん)
『みんなのまちづくりゲーム』はゲームバランスなどを調整のうえ商品化を目指すとのこと。
皆さんの街でまちづくりを体感してもらえる日も近いかも、ですね。
(日比谷)
