
古くから暖房や調理などに広く利用されていた“炭”。
この地域でもよく炭窯が見られたそうですが、炭焼きには長時間(時には数日間!)にわたる火の番や温度管理など多くの手間がかかるもの。
いまでは炭を焼くお宅は「町内に2~3軒」(入谷の農家さん談)と言われています。
そんなある日の12月中旬。
「新技術の炭焼き実験をするよ」との情報に、校舎の宿 さんさん館へお邪魔しました。
本当だ、校庭に炭焼き小屋ができています。

こちらが実験担当者、阿部壽夫さん。
従来の10分の1~3分の1の時間で炭が完成するという『阿部式炭焼き法』の開発者です。

壽夫さんは放送大学在学中の2007年、元東北大学教授高橋礼二郎先生への師事をきっかけに炭焼きの研究を始められました。
『阿部式炭焼き法』の技術は壽夫さんが2009年に発明・発見されたものです。
2013年5月には特許「炭窯及びそれを用いた炭の製造方法として」出願されています。
今回は宮城大学地域連携センター依頼により南三陸復興ステーションのあるさんさん館へ炭窯を設置することとなったそうです。
『短時間で炭窯を設置して試運転までの実験』であり地域の皆さんへ向けた『阿部式炭焼き法』体験会でもあります。
「では、皆さんに手伝っていただきながら窯づくりを始めたいと思います。」(壽夫さん)
炭窯の本体は200リットルのドラム缶。
内側に断熱材が仕込まれており、その外側を土とブロックで覆っていきます。

およそ2時間で縦型の釜が完成しました。
初焼きの材料は竹。

そして焚き口から着火。
燃料は着火剤代わりのわずかな木端のみ。
「窯内部の温度が上がれば、あとは中身の竹が自分の発生ガスで加熱されるんです。」(壽夫さん)

煙突を見守る壽夫さん。

煙の色が茶から青に変わり、透明部分が見え隠れすれば窯内が充分熱せられた証拠です。
(写真では炎が煙突より飛びだしました)
どうやら成功のようです。

更に温度が上昇すると煙も見えなくなりました。
そして着火から2時間半後、窯止め。
オープン!

下は翌日、炭が落ち着いたところです。
姿のままきれいに縮んだ竹炭が完成しました。
蒸し焼き状態で炭化させた高品質の炭です。


従来の方法であれば10時間以上かかる炭焼きが、てこずりながらも2時間強で終了しました。
壽夫さんによれば、焚口からの送風や材の乾燥度など条件が整えば1時間でも可能とのこと。
これからの地域の特産物として、また竹林の過拡大対策として技術の活用が期待されます。
「炭がたくさんあったら今までと違う使い方ができるんじゃないか?」
「畑土に混ぜればCO2削減と減農薬の土壌改良効果が狙える。」
「空気清浄用に壁材や床材の下にびっしり詰めたりとか。」
贅沢な…!
炭の今後がすこし、いや、非常に楽しみです。

お問合せ 阿部壽夫さん
(注意)年明け1月中旬以降、設置窯の燃焼特性計測を予定されているそうです。
ご興味のある方は是非。
参考情報
- 阿部壽夫,高橋礼二郎(2014),第23回日本エネルギー学会大会要旨集pp.94-95,「木質バイオマス利用に向けた新炭焼き技術の提案」
- 阿部壽夫(2014)特開2014-221895「炭窯及びそれを用いた炭の製造方法」
- 阿部壽夫(2012)修士学位論文(自然環境科学),放送大学「木質バイオマスの高度利用を目指した新炭焼き技術に関する研究」
- 阿部壽夫(2013),OUJ神奈川学習センターふゆだより,53,8-9「新炭焼き法の提案」
- 高橋礼二郎(2012),放送大学平成24年度第1学期面接授業宮城学習センター開設科目,脱原発の本命は木炭エネルギー,2328240,「阿部式炭焼き法」
(日比谷)
