
町のグッズショップで“経木(きょうぎ)コーナー”を見かけたことはありますか?

「経木?おむすび包むアレ?」
もちろんそうですが、それだけじゃないんです。
店頭にはオリジナルの絵葉書や間接照明など、ちょっと意外な経木グッズたちが並んでいます。


これらは歌津地区『クチバシカジカ工房』の作品。
代表の渡部正行さんにお会いすることができました。

もともと木工の経験はなかった正行さん。
震災後、水道事業所の臨時職員として給水等の作業に就きながらたくさんのボランティアさんに出会ったといいます。
「その中には私の趣味のクラシックカー仲間もおり、これまで全くゆかりのなかった方もいました。
何回も繰り返し来てくれる方もいました。
支援に応えるためにも町を再生させなければ、と思いました。」
ご縁あって、正行さんは静岡の職人さんから経木削りの機械を譲りうけました。
栃木の工場で修行し技術を身に付けました。
「木の工房を作れば町の人材と木を活かすことができる。」
ネット上で協賛金を募り、ご夫婦で始めたのが『クチバシカジカ工房』です。
使う材は赤松や杉、マダなど。
今や全国でも希少となった経木削りの技術。
透けるほどに薄く削り、メモ帳などの商品を生み出しています。
絵葉書用の魚のイラストも自作。
イベント時には数百枚の発注が入る人気商品です。


起業後も、正行さんが縁をおろそかにすることはありませんでした。
工房の代表として、2013年度までは仮設住宅の自治会長として更に大勢のボランティアさんを迎え入れてきました。
「まあ、千人じゃきかないだろうなあ。」
撮った写真は1枚ずつ日付とボランティアさんの名前を印し、保管しています。
が、昨年奥様がご病気をされたこともあり今はなるべくお住まいの仮設住宅を離れないようにしているという正行さん。
経木のお仕事も、材の裁断以外はほとんどご自宅で作業されているそうです。
本設の工房を建てる計画も保留となっています。
「しばらくは今の形のまま販路拡大に努めようと思っています。
この規模で売り上げを出すのは簡単なことではありませんが、続けるつもりです。」
正行さんは顔を上げます。
そこに見えるのは工房の作品のほか、ボランティアさんやご友人方との記念写真、プレゼントの品。
四畳半の天井までびっしりと埋め尽くされています。

「これだけ多くの応援をいただいているんです。
辞めるわけにはいきません。」

(愛車グロリアの写真と共に)
クチバシカジカ工房
電話・ファックス 0226-36-3283
ボランティアバス関東 クチバシカジカ工房紹介ページ
(日比谷)
