青い帽子と「大漁」と書かれたはっぴを着た関係者たちが、スーツ姿の2人の男性を中央に、積み重ねられた魚の入った白い発泡スチロール箱の前で笑顔で並んでいる落成記念の集合写真

東日本大震災から5年、町の誰もが待ち望んだ本設魚市場が落成式を迎えました。町の基幹産業である水産業を支える最も重要な施設の完成に、「めでたい!」の一言しか出ません!

南三陸と水産業

北からの冷たい親潮に含まれる豊富な栄養分を求め、南からの温かい黒潮に乗ってたくさんの魚類が集まってきます。寒流と暖流、この大きな2つの潮流が交わり合う潮目であるがゆえに、“世界三大漁場”とも称される大漁場が形成されるのが、三陸沿岸です。

加えてここ志津川湾は、リアス式海岸特有の奥まった海岸線により波が穏やかなことが多く、カキ・ワカメ・ギンザケ・ホタテ・ホヤなど、養殖による生産も盛んにおこなわれています。

また、漁獲された魚介類を加工する水産加工業やそれを販売する小売業・新鮮でおいしい海の幸を提供する飲食業や宿泊業・漁業体験やブルーツーリズムを提供する観光業など、町内の多くの産業が、水産業と志津川湾の豊かな海によって成り立っています。

町人口に対する漁業者の割合は、実に15歳以上の5人に1人以上。後継者となる若手漁師も比較的多く、これからの町の未来を担う重要な産業です。

新たな取り組みにも盛んにチャレンジし、近年では戸倉地区でのカキ養殖が、国内初となる養殖生産物の国際環境認証ASCを取得したことも記憶に新しいです。

青空と白い雲の下、複数の漁船が岸壁に整然と並んで停泊しており、魚市場の施設と緑の山々が見える穏やかな港の風景を写した写真

水産業を支える魚市場

そんな町の水産業を支えるのが、志津川魚市場。正式名称を「南三陸町地方卸売市場」といいます。

生産者によって水揚げされた魚が持ち込まれ、これに値段をつけ、仲買人に販売するのが主なお仕事です。簡単に言えば“お店のお店”。漁師さんが獲った魚の多くは直接スーパーなどに並ぶのではなく、この卸売市場に一度集められ、ここで買い取られたものが小売店や飲食店に並び、私たちのもとへと届くのです。

ちなみに築地市場のように大規模で農林水産大臣の認可を受けたものが「中央卸売市場」、志津川魚市場のように地方に点在する小規模のものを「地方卸売市場」といいます。

志津川魚市場の水揚げ状況は、平成26年度で約8,500トン・2,080百万円(『南三陸町統計書 平成27年度版』より)。

秋サケやギンザケをはじめ、春先に大量に漁獲されるイサダ(オキアミ)、ヒラメやカレイ類、志津川ダコとも称されるマダコやミズダコを中心に、幅広く多種多様な沿岸魚が市場に並べられます。

黒い縁どりのデジタル掲示板の緑色の画面に、定置網や刺網、養殖などの漁業種別、船名、魚の種類などが表示されている写真

被災と復興

先述のとおり、多くの産業を通じて町を支える水産業。

私たちのくらしにたくさんの恵みを与えてくれる海によって、町はとてつもない被害を受けることとなりました。海を生業にする漁業者や水産業の受けた影響は特に甚大でしたが、5年が経過し徐々に復旧が進められています。

被災した23の漁港は、すでに全ての復旧工事が着手されました。震災前2,200隻ほどあった漁船は現在約1,000隻となりましたが、養殖の売上高や魚市場の水揚量・取扱高は、すでに震災前を超える水準となっています。なかでも、震災以前に魚市場水揚金額の5割以上を占めていた秋サケ漁の復旧に力が注がれ、その水揚げシーズンに間に合うよう、仮設魚市場は震災同年の10月には完成・開場し、4年半以上にわたって活躍してきました。

仮設魚市場は、先月からは新たに福興市の会場として使用され、新たな賑わいを見せています。震災は私たちに深刻なダメージをもたらしましたが、深い悲しみの中で、町の水産業が新たな取り組みや未来へと向かうための種も生まれました。長年の養殖などで蓄積された海底のヘドロがかき混ぜられ、「海が50年若返った」という人もいます。

養殖施設の多くが破壊されましたが、一方で過密養殖が解消され、これまで3年ほどかかっていたカキやホヤが、1年でも大きく育つようになりました。

新しい産直施設や飲食店ができたり、国際認証の取得があったり、そして町を訪れてくださるたくさんの方々との新たな出会いを得ることもできました。

屋根付きの仮設市場に水色のパレットやコンテナが整然と置かれ、1台のフォークリフトが駐車してある市場内の写真

本設魚市場の完成

壊れた魚市場のスペースで瓦礫に囲まれながら漁業を再開したあの日から5年。ついに、誰もが待ちわびた本設の魚市場が完成しました。

6月1日、よく晴れた青空に真新しい市場の姿が生え、少し強い風にたくさんの大漁旗がたなびきます。

記念すべき完成式典には多くの人が集まり、いつもはカッパに長靴姿の漁業者や魚屋さんも、バッチリとスーツを着て足を運んでいました。

「海にやられたが、豊饒(ほうじょう)の海は残った。水産の再生なくして南三陸の再生はないと、口癖のように言ってきた。この喜びをここに集まったみんなで分かち合いたい。」と、喜びの伝わる町長の挨拶で式典が始まりました。

  • 水産の町南三陸の再生・復興のシンボルに
  • 全国に三陸のおいしい魚を発信する拠点となれ
  • 全国を代表する産地市場として

と、来賓の方々からも、本設魚市場にかけられる期待のこもったメッセージが届けられます。

華々しくテープカットとくす玉の開花もおこなわれ、町の新しい未来を担う魚市場が、晴れて開所しました。

南三陸町のロゴマークと「南三陸町地方卸売市場」の文字が書かれた、大きな本設魚市場の正面入口前に設置された「祝 南三陸町地方卸売市場落成式」と書かれた横断幕の前に並んだ、大漁旗がデザインされた法被を着た関係者の男性たちがテープカットをしている様子の写真

高度衛生管理型市場

震災からの復旧といっても、元通りの魚市場から進化を遂げています。新しい魚市場は“高度衛生管理型市場”。

敷地内の衛生管理や水産物の鮮度管理が、高度にできる施設となっています。3つのエリアに分けられた衛生管理で、鳥の侵入や車両の乗り入れ、関係者も手や長靴を洗浄してから入場するなど、厳しい基準で出入りするモノを制限します。

水揚から搬出までの時間を短縮するよう導線が設けられており、卸売業務を効率化するための最新情報管理システムを導入することで、水産物が鮮度を落とすことなくスムーズに取引されます。そのほか排気ガスが出ない電動フォークリフトや、魚に傷をつけないシャーベット氷を製造するスラリー製氷機など、HACCP対応の高度な機能・技術が多数導入されています。

スーツ姿の大勢の人々が、明るい照明の広々としたコンクリート床で、右側にフォークリフトが数台並んでいる市場内を見学している写真

記念すべき初競り

さあいよいよ、新魚市場での初競りがおこなわれます。

クロソイやヒラマサ、赤カレイの並ぶ競り場に、スーツにハッピ姿の仲買人たちが集まります。

光沢のある赤カレイが氷を敷いた白い発泡スチロール箱に詰められたものがたくさん積み重なり並んでている写真

ベテラン競り人の威勢のよい掛け声で競りがはじまると、普段の3倍ほどのご祝儀価格がつけられていきます。

初競りの喜びか、驚きの高値の苦笑いか、仲買人のみなさんの笑顔が輝いています。

南三陸の仲買人さんたちはみんな仲がよく、いつも賑やかな競りの時間が楽しいです。

カラフルな法被と青い帽子を着た関係者たちが、水色のかごが並んだ水槽の周りに集まり笑顔を浮かべている写真

町の未来へ

南三陸町は大きな震災の被害から、海と共に生きる町として立ち上がり、新たな歩みを始めています。

海を愛する漁業者、笑顔があたたかい仲買人、威勢のよい競り人、立派な新魚市場。

たくさんのステキな人たちの手を経て、新鮮でおいしい水産物が、これからも生産されていきます。

豊富な水産物と南三陸町の未来を、ひきつづきお楽しみに!

「祝 南三陸町地方卸売市場落成式」と書かれた横断幕が掲げられたゲートの中央に吊るされた金色のくす玉が割られ、「祝 南三陸町地方卸売市場落成式」の垂れ幕とカラフルなテープが風になびいている様子の写真

市場見学情報

予約は不要。見学希望の方は持ち物を持参のうえ、下記の時間帯にお越しください。なお、セリの時間帯は2階からの見学となります。

  • 日時
    • 7月20日(水曜日)午前12時30分から午後3時まで
      セリの時間帯(予定) 午後1時から2時まで
    • (月曜日)7月23日(土曜日) 午前6時30分から正午まで
      セリの時間帯(予定) 午前7時から8時30分まで
  • 持ち物
    • 帽子
    • 長靴(1階荷さばきエリアのみ着用)
    • (注意)本施設は高度衛生管理型市場となりますので、帽子を着用していない方は入場をお断りしています。また、1階の荷さばきエリアは、長ぐつ着用となりますので、ご持参いただきますよう、ご協力をお願いします。
  • 見学会の問い合わせ 産業振興課水産業振興係 0226-46-1378

この記事に関するお問い合わせ先

企画課 企画情報係
〒986-0725 宮城県本吉郡南三陸町志津川字沼田101番地
電話:0226-46-1371
ファックス:0226-46-5348
本ページに関するお問い合わせ