南三陸少年少女自然調査隊

南三陸町の自然や文化に関心を持つ町内の小学4年生から中学3年生を対象とした自然体験クラブ「南三陸少年少女自然調査隊」が、2019年5月に発足しました。当センターでは、南三陸少年少女自然調査隊といっしょに南三陸町の自然や文化を学ぶプログラムを実施しています。

南三陸少年少女自然調査隊の詳しい情報は下記リンクをご覧ください。

小中学校への出前授業等

近隣の小中学校等を対象とした、南三陸町の海洋資源・水産物に関する出前授業を行っています。また、南三陸町の海をフィールドとした臨海実習等への協力も行っています。

過年度の実施実績は下記のPDFファイルをご覧ください。

イラストが描かれた白紙を持った笑顔の男性が話しているのを、自席に座った子供たちが熱心に聞いている写真
資料が映し出されたスクリーンが設置されたステージの前でマイクを持っている男性の話を、椅子に座った生徒たちが聞いている写真

地元の小中学校への出前授業の様子

地元の高校との連携

 当センターでは、2017年春より宮城県志津川高等学校自然科学部が実施している南三陸町内の生物調査に協力しています。松原干潟の生物相調査に加え、2018年春より町内を流れる八幡川下流域の生物相調査もスタートしました。

志津川高校自然科学部との調査の実績
日付 場所 調査内容
2017年5月27日 松原干潟 干潟の生物相調査
2017年6月24日 松原干潟 干潟の生物相調査
2018年5月20日 松原干潟 干潟の生物相調査
2018年6月2日 松原干潟 干潟の生物相調査
2018年6月5日 八幡川下流域 河川の生物相調査
2019年6月8日 松原干潟 干潟の生物相調査
2019年7月20日 八幡川下流域 河川の生物相調査
2020年6月21日 松原干潟 干潟の生物相調査
2020年8月1日 八幡川下流域 河川の生物相調査
2021年5月29日 松原干潟 干潟の生物相調査

干潟調査

東日本大震災に伴う大津波により甚大な被害を受けた旧志津川市街地に位置する八幡川河口(松原干潟)がフィールドです。希少な生物も多く見つかり、多様性豊かな貴重な自然環境であることが確認されています。今後も生徒たちとともに調査を継続していく予定です。

松原干潟の背景

50年前、八幡川河口付近は砂浜で潮干狩りなどが楽しまれていた場所でした。1960年に起こったチリ地震津波により防潮堤が築かれ、公園になりました。しかし、2011年東日本大震災の津波により防潮堤が壊され、再び干潟に戻りました。震災後、巨大防潮堤が作られ埋め立てられる計画でしたが、住民の運動により干潟が守られることになりました。干潟が壊されるという例は数多く聞きますが、自然災害により干潟となった場所が守られた例は全国でもあまり多くありません。震災から6年が経ち復興工事も進み、町の風貌が少しずつ見えつつあります。守られた干潟にはどんな生き物たちがいるのか調査をして見たところ、たくさんの貴重な生き物が見つかり、干潟が自然の姿に戻りつつあることを証明してくれました。

この豊かな自然に囲まれた地で生きるものとして、これらの干潟を含む自然環境を守り伝えていく必要があります。南三陸町では志津川湾をラムサール条約湿地に登録する準備を進めており、順調に行けば2018年10月に登録される予定です。登録された際には、町民で自然環境の保護と活用をしていく姿勢を見せていくことが重要だと考えています。

(志津川高校自然科学部作成の図鑑「松原干潟の生き物たち」より引用)

2017年度の様子

石が山積みされた屋外にバケツなどの道具が置かれた傍に立つ男性の話を、輪になった参加者が聞いている写真
紺色の作業服を着た男性が見ているなか、椅子に座った2名の男子生徒が調査を行っている様子の写真

高校生との調査の様子

赤褐色で甲は円形に近い形をしたトリウミアカイソモドキの写真
濃い赤色の触角があり、体色は灰緑色で脚に黒褐色の帯模様があるヨモギホンヤドカリの写真
全体的に白くて甲は丸く、甲に対してハサミが大きいのが特徴のカネココブシガニの写真

左:トリウミアカイソモドキ 中:ヨモギホンヤドカリ 右:カネココブシガニ

2011年に発生した東日本大震災により防潮堤が壊され、再び干潟に戻った松原干潟にどのような生きものがいるのか、興味を持った志津川高校自然科学部の部員の皆さんと一緒に調査を行いました。現在も続いている松原干潟の生物調査の記念すべき第一回目の調査でした。

2017年度の調査の結果は、下記ファイルをご覧ください。

2018年度の様子

水が溜まっている松原干潟の中を男性が覗き込むように見ている写真

松原干潟

黒い帽子を被った男性と紺色のジャージ姿の女子生徒が座り地面を見ている表層生物の探索の様子の写真

表層生物の探索

緑色の帽子を被った男性と紺色のジャージ姿の男子生徒が溝の中を見ている、底土中生物の探索の様子の写真

底土中生物の探索

約3センチメートル位の大きさで、全体的に茶色く風船が縮んだ様な形をしたスジホシムシモドキの写真
細長い紐状で、多数の節と疣足を持つジャムシの写真
約6センチメートル位の長さでヘビのような形をしたオオヘビガイの写真

左:スジホシムシモドキ 中:ジャムシ 右:オオヘビガイ

2017年度に引き続き、松原干潟の生物調査を行いました。2018年度では64種の生きものが確認され、2017年度と合わせて96種の生きものが松原干潟から見つかりました。そのうち、ジャムシなどのレッドリスト掲載種は、12種となりました。部員たちは、昨年度の調査結果との比較を行い、その結果を基にした研究発表を町内外で行いました。

2019年度の様子

雨が降る中レインコートを着た参加者たちが八幡川河口域を歩いている様子の写真
岸辺で探索したり水の中に入って探索したりしている参加者たちの写真

松原干潟と隣接する八幡川河口域の様子

3人の干潟生物研究者の方々が水の中に入り調査を行っている様子の写真
理科室の机の上に置かれた白いトレイの中に見つけたきた生物を並べ、参加者たちが調査を行っている様子の写真

干潟生物研究者のみなさんの調査と種同定の様子

黒板の前に設置されたスクリーンの右側に男性が立ち、パイプ椅子に座った参加者たちが熱心に話を聞いている様子を後方から撮影した写真
スクリーンの左側に座ってギター演奏を行っている金谷博士を、参加者たちが聞いている写真

干潟のセミナーの様子(左:鈴木孝男博士、右:金谷弦博士)

3年目となった2019年度は、従来の松原干潟に加え、奥の水尻川河口近くの地点と八幡川の河口右岸の地点も新たに調査対象にしました。当日の調査には、みちのくベントス研究所の鈴木孝男博士や国立環境研究所の金谷弦博士をはじめとした、第一線で活躍する干潟生物研究者のみなさんに指導していただきました。オオノガイ(準絶滅危惧:宮城県)やクロガネイソギンチャクなど今回新たに見つかった種を含む64種の生きものが確認されました。これで松原干潟で見つかった生きものは合計120種となりました。

調査終了後には志津川高校にて鈴木孝男博士と金谷弦博士による「干潟のセミナー」が開催されました。高校生や町内外の方々を対象に、志津川湾の干潟の現状と、干潟生物の生態系における役割をテーマに講演していただきました。講演に合わせて、金谷博士には干潟の生きものを題材にしたベントスソング「外来種のなげき」を披露していただき、楽しい雰囲気のセミナーとなりました。

今年度開催された干潟のセミナーの詳しい内容は以下のPDFファイルをご覧ください。

2020年度の様子

参加者たちが干潟の水の中に入ったりして調査を行っている様子の写真
干潟の水辺に立ち生物を探している参加者たちの写真

干潟調査の様子

机の上に見つけてきた生物類が並んだ白いトレイを覗き込んで見ている参加者たちの写真
白い長方形のトレイの中に干潟で見つけてきたカニ類や貝類などの生き物が並んでいる写真

種同定の様子

2020年度、通算4年目となる松原干潟の調査が行われました。今回は仙台二華中・高校の生徒と一緒に、干潟の生き物を採取しました。結果、カニ類やゴカイ、オニアサリ、ヒメシラトリ等、1回の調査では過去最多となる91種類の生き物が確認されました。

八幡川下流域生物調査

2018年春より、八幡川下流域の生物相調査を行っています。八幡川は南三陸町内で最も広い流域面積を持つ河川です。現在、八幡川の下流域は河川堤の工事が進んでおり、そこに住む生物への影響を知るためにも、「八幡川下流域にどのような生物が住んでいるのか」という基礎的な調査が必要です。今後も生徒たちとともに継続してデータを集積していきます。

結果は、環境省が実施し、毎年日本全国で約8万人が参加している全国水生生物調査(外部)に提供し、インターネット上で公開されています。

なお、本調査は株式会社エコリスのみなさまに指導・協力をしていただきました。

2018年度の様子

橋を車が通行し、両端に鬱蒼と茂った草が生えている八幡川の写真
川の両端の土手でコンクリートで固められ、水量が少ない八幡川下流域の様子の写真
水量の少ない川の中にある大きな石の上に乗り探索を行っている参加者たちの写真

八幡川下流域の様子

左:地点1 中:地点2 右:地点3

参加者たちが見ているなか、川の中に入った男性が水の中に網を沈めている様子の写真
紺色の帽子を被った男性が、鬱蒼と茂った草むらと川の境目の水の中に持ち手が付いた網を沈めている写真

河川生物の採集の様子

約10センチメートル位の大きさで、体側に小判型の斑点を持つヤマメの写真
約7センチメートル位の大きさで、褐色で背部から体側にかけて鞍状の斑紋があるウツセミカジカの写真
触角が丸く、広葉樹の枯れ葉のような体形のコオニヤンマの幼虫の写真

左:ヤマメ 中:ウツセミカジカ 右:コオニヤンマ

2018年度は、松原干潟の生物調査に加えて、八幡川下流域を対象とした河川の生物調査を行いました。上流に近い淡水域と、海と川の水が混ざり合う汽水域で調査を行いました。淡水域では、コオニヤンマなどの水生昆虫やヤマメなどの渓流に生息する魚が確認されました。また、トンボの仲間のヒメサナエやヤマメと同じく渓流に住むウツセミカジカなど、レッドリスト掲載種も確認されました。汽水域では、クサフグなどの海水魚に加えて、レッドリスト掲載種のシロウオやニホンウナギが確認されました。高校生との調査により、身近な環境に豊かな自然が残されていることが分かりました。

2018年度の調査の結果は、宮城県環境生活部環境対策課のホームページ(外部)をご覧ください。

2019年度の様子

川の両側がコンクリートで固められた川の中に、大勢の参加者が入り生物を探索している様子の写真
草が生えた川の中に入った参加者たちが網を持って生物を採取している様子の写真

八幡川下流域の様子

左:汽水域 右:淡水域

川の土手に設置された長机の上に置かれた白いトレイの中にいる採取した生物を、参加した子ども達や大人が見ている写真
理科室の机の上に並んで置かれた白いトレイに採取した生物が並び、集まった参加者たちが見ている写真

調査の様子

円筒型で細長い体系をしたニホンウナギの写真
2本の触角と3本脚で、尾っぽが3股に分かれているこげ茶色をしたカワトンボの写真

左:ニホンウナギ 右:カワトンボ類

2019年度の八幡川下流域の生きもの調査は、今年度の5月に発足した南三陸少年少女自然調査隊と合同で行いました。今年度の調査は汽水域と淡水域のそれぞれ1地点ずつ計2地点で行いました。汽水域ではシロウオや今年度はじめて確認されたヌマガレイなどの汽水性の魚が確認されました。淡水域では、カワトンボ類や昨年度も見つかったレッドリスト掲載種のヒメサナエやウツセミカジカなどが確認されました。また、両地点で絶滅危惧種のニホンウナギの幼魚も見つかり、昨年度に引き続き貴重な野生生物の生息が確認されました。

2019年度の調査の様子を紹介した南三陸なうの記事は下記リンク(外部)でご覧ください。

2020年度の様子

コンクリートで固められた土手の上に座った参加者が、3人の男性が川に入って網を放り投げている様子を見ている写真
川の中に入った4人の男性がそれぞれ網を広げて生物を採取している様子の写真

八幡川下流域の様子

鬱蒼と草が生えた川の中に入った参加者たちが、それぞれ網を使用し生物を採取している様子の写真
男性が持つ小さな透明の水槽の中に入った生物を、集まった参加者たちが見ている写真

調査の様子

体がくの字型に折れ曲がった透明のスジエビの写真
暗灰色で頭が丸くて体は太短く円筒形のヌマチチブの写真

左:スジエビ 右:ヌマチチブ

2020年度の調査は、昨年に引き続き南三陸少年少女自然調査隊と合同で行いました。今年は汽水域周辺の1地点を集中して調査し、レッドリスト掲載種のヒメサナエやヒラマキガイモドキ等の絶滅危惧種を始め、スジエビやヌマチチブ、コオニヤンマ等、計35種類の生物を確認しました。また、今回の調査では初めてウキゴリが採取されました。昨年の台風の影響もあってか、前回とはまた異なる結果となりましたが、八幡川が貴重な生物の生息地であることを改めて認識する機会となりました。

各種講演等

ご依頼に応じ、各種講演等を行います。

この記事に関するお問い合わせ先

自然環境活用センター
〒986-0725 宮城県本吉郡南三陸町志津川字沼田101番地
電話:0226-25-9103
ファックス:0226-25-9703
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