平成25年3月13日に、平成25年南三陸町定例議会において町長が表明した、施政方針です。

施政方針

 

 平成23年3月11日に発生した東日本大震災より早いもので二度目の春を迎えます。昨年は「復興元年」の位置づけのもと、壊滅的な被害からの復旧・復興に全町を挙げて取り組んでまいりました。

 我々の先人が、幾多の大津波により甚大な被害を受けながらも、不撓不屈の精神でこれらの苦難を乗り越え、町を再建してきたように、私たちも、これまでの取り組みにより、沿岸部を席巻していた瓦礫の処理を進め、震災後の無残な姿からの脱却は順調に進んでおり、基幹産業である水産業につきましても、漁業者の懸命な努力もあって一定程度の水揚げを確保できる水準に回復しつつあります。

 この間、国にあっては、民主党を中心とした政権から、自由民主党と公明党による連立政権へと政権交代し、新たに発足した安倍内閣においては安倍首相自ら「閣僚全員が復興大臣だという意識を共有し、あらゆる政策を総動員する」と表明しており、復興予算を盛り込んだ大型の補正予算も可決・成立するなど、復興に向けた一層のスピード化が期待されるところであります。

 また、宮城県におきましても県管理の河川や道路、防潮堤等、具体的事業への着手が始まっております。町といたしましても、町事業も含め県と緊密に連携し、一体的な展開を図ることにより、効率的かつ迅速に復興事業全体を推進しながら、国に対しましても今後とも被災地の現状をしっかりと訴え、復興に有効な施策の制度化を実現していかなければならないと考えております。

 目下の極めて厳しい状況下での最優先課題は、震災からの再生・復興であることは言うまでもありません。町民生活安定のための必要なサービスを確保する一方、復興の実現に向け、相当な規模となりました平成25年度当初予算の執行において、政策の順位付けと執行体制の強化並びに資本の集中的な投下を図らなければならず、一時的に施策の密度が薄くなる分野も予見されますことから、町民の皆様にはまちづくりの長期的な展望をお示し、理解を得ながら、ふるさとを取り戻すための政策について、勇気をもって進めなければならないと考えております。

 また、平成25年度は復旧期の最終年度であるとともに、復興事業を本格的に展開していく年度となります。従いまして、震災復興計画で掲げた「緊急に対応すべき重点事項」の完遂と継続的に実施すべき事業を見極め、復興の進捗が目で見、肌で感じられるよう復興諸施策を推進し、震災から3年目となるこの年を「生活再建・住宅再建元年」と位置付け、災害公営住宅の建設、防災集団移転促進事業用地の造成工事について、全ての計画地に着手するとの強い意志を持って進めてまいります。

 それでは、平成25年度町政運営の主要施策の概要につきまして、「南三陸町震災復興計画」に掲げました復興目標の柱に基づき、順次申し上げさせていただきます。

 はじめに、「安心して暮らし続けられるまちづくりの推進」についてであります。

 被災された多くの町民の方々は今もなお不自由な生活を余儀なくされております。長期化が予想されます応急仮設住宅での生活が、できる限り良好な生活環境となるよう、必要な維持管理の確保等は切れ目なく続けていかなければならないと考えております。また、環境の変化によるいわゆる生活不活発病の防止や孤独な生活に陥らないよう心のケアと生活全般の支援を継続させるため生活機能調査や地域支え合い体制づくり助成事業も継続してまいりますし、自治会等を中心として構築された地域コミュニティの振興を図る取り組みを推進するため、その活動を支援するボランティア団体等へのおらほのまちづくり支援事業の適用範囲の拡充も図ることとしております。

 次に河川堤防・護岸の仮復旧の取り組みについては、地盤沈下による沿岸部の浸水や塩害被害をくい止めるため、関係機関と連携して河川堤防と護岸の復旧事業を進めてまいります。また、消防・防災機能の早期回復に向けた取り組みとして、町民生活の安全・安心を担保する社会基盤である防災機能の強化を図るため東日本大震災で流失した潮位観測等システム復旧事業を行うほか、ライフラインであります上水道事業につきましては、平井田地区などの災害復旧事業を進めてまいります。

 病院・社会福祉施設の復旧につきましては、現在、病院及び保健福祉施設の一体的な整備・建設に向けて設計業務を進めておりますが、とりわけ病院事業につきましては、開業までの間は公立志津川病院及び南三陸診療所において医療体制及びマンパワーの確保が必要となることから、継続的な病院運営が可能となるよう一層の健全化にも努めてまいります。また、介護福祉施設の復旧においては、民間事業者による戸倉地区への仮設デイサービスセンターの整備並びに志津川地区における小規模多機能型居宅介護施設の整備が予定されることから、施設整備に係る支援を行ってまいります。さらに必要な医療・福祉体制の安定的確保といたしまして、看護・介護学生等修学資金貸付制度の継続とホームヘルパー2級が制度改正により改められます介護職員初任者研修にも対応した講座も開設し人材の育成にも努めてまいります。

 続いて、行政機能の回復についてであります。復旧・復興事業の本格化に伴い深刻化するマンパワー不足につきましては、国・県及び全国の自治体の協力を得ながら、引き続き多くの長期派遣職員のご支援をいただくこととしております。また、新規及び任期付職員の採用等による充足も図り、行政機能の充実・確保に努めながら復興事業への取り組みを加速させるため、復興事業推進課を3課に再編し、内部体制について不断の強化を進めることとしております。

 命を守る土地利用への転換につきましては、復興における土地利用の基本的な考え方である「なりわいの場所は様々であっても住まいは高台へ」のもと、高台への住まいの確保が現実味を帯びてまいりました。先の入谷地区・名足地区災害公営住宅整備事業並びに藤浜地区防災集団移転促進事業の着工、引き続く寄木・韮の浜地区防災集団移転促進事業など、町内各地にまさに「生活再建・住宅再建元年」としての槌音が確かなものとなっております。また、個別移転される方々への町独自の支援策であります危険住宅移転支援事業補助金、水道給水装置設置費補助金、下水道等受益者浄化槽設置工事費補助金、高台移転等低炭素社会対応型浄化槽等集中導入事業費補助金及び住宅用太陽光発電システム設置補助金制度も住宅再建への支援策として継続してまいります。なお、平成25年度におきましては、被災した低地の有効活用及び高台との有機的連携を図るための被災集落等再生基本計画の策定にも取り組むこととしており、さらに震災を経て再構築されつつある地域コミュニティにつきましても、しっかりと地域に根差したものとなるよう下支えの体制を構築するため、コミュニティの活動の核となる集会施設の確保につきましても支援策を講じて行く考えでおります。

 次に、生命と財産を守る防災と減災のまちづくりであります。海岸・河川堤防の本格復旧・整備につきましては、国、県その他関係機関と緊密に連携し早急に整備を進めてまいりますが、消防施設等の高機能化の取り組みといたしまして、入谷地区、韮の浜地区への防火水槽の更新設置、石泉班、石浜班に消防小型動力ポンプ積載車を更新配備し、さらに防災と減災のまちづくりの推進に当たり、自主防災組織の再構築、防災教育の充実にも努めてまいります。また、東日本大震災の経験と教訓を記録し後世に伝えるとともに、大津波の教訓を踏まえた地域防災計画の見直しを行うこととしておりましたが、本町の一部が原子力災害対策における緊急時防護措置準備区域(UPZ)に含まれたことから、新たに原発事故対策を規定した原子力災害対策編の策定が求められております。対策編につきましては、関係機関のご意見等を踏まえながら早急に策定してまいりますが、地域防災計画全体の取りまとめにつきましても、万全を期してまいりたいと考えております。

 命を守る交通ネットワークの整備につきましては、三陸縦貫自動車道登米志津川道路の整備が志津川トンネルの掘削を含め順調に進捗しており、南三陸道路におきましても小森地区で下部工事が進むなど、非常時に命を守るための重要な路線としての機能が大いに期待されますことから、引き続き早期整備に向け積極的に働きかけを行ってまいります。また、横断1号線等の生活密着路線や被災時に地域が孤立しないための道路ネットワークの具体的な検討を進め、路線整備に向けた道路網計画の策定にも着手してまいります。公共交通網の再整備に向けた検討といたしましては、昨年12月から本格運行が行われておりますBRT(バス高速輸送システム)と災害臨時バス等の有機的連携による復旧・復興の進捗に併せた利便性の高い公共交通機関の確保を図りながら、JR気仙沼線の鉄路による早期復旧の実現に向けた取り組みの一つとして陸前戸倉駅移設整備基本計画調査設計事業を推進してまいります。

 次に安心を実感できる保健・医療・福祉のまちづくりであります。本町の地域医療を担う公立志津川病院並びに保健、福祉の中核施設となる(仮称)総合ケアセンターの一体的な整備につきましては、平成27年4月の開業を目指し基本及び実施設計を進めておりますが、工事期間等を考えますと平成25年度中には建設工事の着手が求められることから、滞りのないようしっかりと取り組んでまいります。また、安心して産み・育てられる環境づくりへの取り組みとして、これまで乳幼児医療費助成事業として進めてまいりました医療費の一部負担金への助成事業を子ども医療費助成事業に改め、対象年齢を15歳まで拡充した制度は、そのまま継続して実施してまいります。さらに、法施行に伴います子ども・子育て支援計画策定にも着手し、地域ニーズに即した保育支援体制の整備と、併せて施設環境の改善を図るため戸倉保育所、伊里前保育所の復旧事業にも着手してまいります。

自然と共生するまちづくりの推進

 災害廃棄物処理につきましては、昨年9月より稼働している災害廃棄物処理施設焼却炉において順調に処理が進み、昨年末現在で約6割の進捗状況と伺っております。引き続き平成25年度内での処理完了を目指し、着実にこれを進めるよう働きかけを行ってまいります。また、本町の災害廃棄物処理は高いリサイクル率のもとに進められていることから、処理によって新たに生み出された資源についても復興資材としての有効活用を図ってまいります。

 次に教育施設等の復旧については、校舎に甚大な被害があり他の学校施設を共用している小学校の復旧事業を進めてまいります。復旧工事に着手いたしました名足小学校につきましては年内の授業再開を目指し、戸倉小学校につきましては、基本及び実施設計を進めてまいります。戸倉中学校につきましては、平成26年4月からの通学区域の変更に向けた取り組みを進めておりますが、学区再編後の学校生活に支障をきたすことのないよう良好な教育環境の確保に努めてまいります。また、被災を免れた学校施設も制限的教育環境にならざるを得ないことから、児童、生徒及び教職員についての心のケアの取り組みや教育環境の向上が図られるよう努めてまいります。なお、本年度も通学時の安全を確保するためスクールバス運行事業と給食費の一部を助成する学校給食費助成制度につきましては、継続して実施してまいります。

 自然環境の保全につきましては、自然からの恵みを生活の糧とする本町にとって自然環境の保全は、被災後においても恒久的に取り組むべき課題であります。河川・海域に流失した震災廃棄物の除去を引き続き進めるとともに、浸水域における生態系の回復も進め、山・川・海の再生と保全に取り組んでまいります。さらに、流失した自然環境活用センターの再建に向けた調査設計も進めてまいります。

 エコタウンへの挑戦といたしましては、本年度もみやぎ環境交付金を活用した公共施設の照明のLED化事業を継続しながら、自然エネルギーや再生可能エネルギーの具体的な導入検討を進め、特に、本町において実現の可能性が高いエネルギーである太陽光発電について、公共施設への導入設計を行ってまいります。また、森林の持つ重要な機能としての二酸化炭素の吸収量に着目したフォレストック認証制度も自然との調和・共存の観点からも有効活用を図ってまいりたいと考えております。

 次に生活衛生環境の保全につきましては、水の安定供給に向け新たな水源の確保を図るための調査を継続して行うとともに保水力を高めるため森林の再生や保育事業にも取り組んでまいりたいと考えております。また、汚水の適正処理を回復するためには、被災後における汚水処理に係る基本的な方針を早期に策定し環境保全を推進していかなければならないと認識しておりますが、当面は、合併浄化槽設置補助事業の継続・制度拡充を図りながら生活環境保全に努めてまいります。なお、本年度は、特定環境保全公共下水道施設の高台移転に伴う接続も含めた機能回復を図るため災害復旧事業も実施してまいります。

 続いてふるさとを想い、復興を支える「人づくり」についてであります。復興期を支える人材の育成を図るためには、次代を担う子どもたちに対して震災から得た教訓を学ぶ防災教育の実施や地域の伝統文化を継承する取り組みを積極的に支援していくことが非常に重要であると認識しております。その環境づくりの一環としても被災した教育関連施設の早急な復旧が求められておりますが、今後、高台の造成スケジュールに併せた再建計画の策定も必要となってくることから、総合体育館や平成の森施設など大規模修繕による復旧が可能な施設等については復旧事業を進め、安全で良好な教育環境の確保に努めてまいりたいと考えております。

なりわいと賑わいの再生

 被災した企業や個人による生産活動の再開を目指した努力により、地域経済の回復の兆しが感じられるようになってまいりました。それに伴い町内での求人も一定程度発生してきておりますが、求人と求職のミスマッチにより安定雇用の状況には未だ至っていない状況にあります。従いまして復旧・復興事業による雇用創出と再建企業等による正規雇用との調整を図り、雇用の確保と生活の安定に取り組む必要があると認識しております。引き続き震災等緊急雇用対応事業や新規学卒者雇用促進奨励金制度などを活用した雇用の創出と先月開催されました町内企業共同求人説明会などの求人と求職のミスマッチを解消する機会の確保にも取り組んでまいりたいと考えております。

 次に産業の復旧についてであります。まず、水産業につきましては、生産基盤の回復の完了期を迎える本年度は、防潮堤の復旧事業を中心として順次進めてまいります。また、本復旧に向け卸売市場施設、シロサケふ化場の設計業務に取り組んでまいりますが、単に失われた施設復旧にとどまらず新たな価値を付加するため衛生管理型の取り組みなども検討し、漁協等の関係機関と連携しながら水族の水揚げ回復に向けた取り組みも進めてまいります。

 農業につきましては、内陸部を中心とした営農の推進に取り組むこととなりますが、その基盤づくりとして、被災農家経営再開支援事業を活用した被災農地の土壌改良と回復を図り、農家経営の復旧に向けた取り組みとして、特に、圃場整備を中心とした農地の集積と継続的農業経営の推進につきましても、種々の補助制度の有効活用を図りながら支援してまいりたいと考えております。なお、美しい農村環境づくり支援事業として推進してまいりました農業系廃棄物資材処分費用に対する助成事業は引き続き実施してまいります。

 次に林業につきましては、塩害被害による枯死・倒木した樹木の処理を進め森林環境の改善を図りつつ、木質バイオマスの利活用など新たな事業展開にも取り組んでまいりたいと考えております。また、高台移転の本格化に伴う復興需要を見据えた良質地元木材の生産・活用の取り組みも積極的に推進し、住宅再建の支援策として南三陸材利用促進事業の充実と南三陸ブランドとしての再興も図ってまいります。

 続きまして、商工業及び観光業については、仮設商店街等による暫定的な事業再開から一年余りが経過し、町内外を問わず多くの皆様が仮設商店街等を訪れ、そこにまさに賑わいが生まれております。今後は、本格的な再建に向けた過渡期への対応が重要となってまいりますことから、引き続き、地域経済活力創出基金を活用した企業立地奨励金制度や起業支援補助金制度の支援策を展開しながら、さらなる賑わいの創出に向け支援体制の強化を検討してまいりたいと考えております。

 復興の歩みを力強いものとするためには産業の再生がその牽引となることは言うまでもありません。水産業に欠かせない漁港や関連施設の本格復旧と漁場と漁業者の再生、農業における圃場整備による農地の回復と営農者の確保、遊休農地対策や第6次産業化の推進、林業における地産地消サイクルの確立に努めるとともに、東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故に伴う風評被害への対応として、安全・安心な南三陸産品を供給する体制を整備していかなければならないと考えております。また、商工業における地元企業の再開支援の強化、併せて企業誘致への積極的な取り組みなど本格復旧への基盤づくり、震災で得た繋がりを活かし、交流人口のさらなる拡大を図るとともに、観光業における従前顧客の呼び戻しと防災教育旅行等新たな観光分野への取り組みも進め、来月から宮城県全域を会場とする大型観光キャンペーンである仙台・宮城デスティネーションキャンペーンが展開されることから、文字通り本町を通過点から目的地へと変えるため、全産業を結集し誘客や販路拡大に取り組むことが重要となってくると認識しております。

 以上、復興に向けた取り組みとしての町政運営の基本的な考え方を述べさせていただきましたが、これら復興政策の推進体制の基本となりますのは、「参加」と「協働」による町民主体のまちづくりであります。各地域で活動を展開しているまちづくり協議会等の活動に対してしっかりとした支援を行い、やむを得ず町外で暮らす町民の皆様にも十分な配慮を行うとともに、これまで以上に対話の重要性を再認識し、また、行政運営の体制といたしましても復興事業を確実に推進するため、復興事業への資源の集中を行う一方で、住民サービスの低下とならないよう十分な配慮と徹底した合理化を図りながら、平成25年度予算に可能な限り盛り込んでまいりたいと考えております。