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おこないさま(しづがわにいだ)
おこないさま(志津川新井田)

おこないさま(志津川新井田)

 東北地方に見られる特異な信仰として、30センチ前後の御神体に布を着せた一対の木偶が「オシラサマ」、「オコナイサマ」、「オシンメサマ」などと呼ばれて旧家で祀られています。御神体の素材は木製又は竹製で、木製のものには頭部が馬頭(ばとう)と姫頭の一対に彫刻されている例があります。毎年一枚ずつ布を着せ加えるのが一般的で、その着せ方は頭部を貫き出した貫頭型と包んでしまう包頭型に分けられます。竹製のものは例外なく包頭型になっています。
 「おこないさま」が何時の頃から信仰の対象になったのかを示す史料は見つかっていません。また、何の神さまであるのかもよくわかっていません。志津川町誌編纂の際に、7件の事例を聞き取り調査したことがありますが、元々は家の主婦が家の守り神をお祭りする際に手にしていた一対の幣束が原形で、一対ということから男女の神とされ、さらに「オガミサマ」と呼ばれる巫女が唱える「オシラ祭文」が馬姫婚姻譚を元にしていたことから馬姫の一対の神となったようです。祭日として布を着せ加える日は各家で異なります。オコナイサマは、家の守護神とされているものもあれば、祀らないとタタリを為すとされているものもあり一定しません。戸倉滝浜の後藤家のオコナイサマには天保3年の年号や大漁祈願の文字が墨書されており、桐材ではっきりと馬と姫の姿を彫りだしています。
 残念ながら、調査の時点ですでに御神体こそ残っているものの、祭祀等の詳細が伝わっていない家も多く、本来この地方のオコナイサマが持っていた意味に関しては今となっては判らないままになっています。

【「志津川町誌」使用写真より】

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